【国際法編】のはじめに
すでにGHQによる日本国憲法制定に関する「真実」は前記事までに明らかにしました。
日本国憲法の約9割がGHQ草案によって出来上がっていて、GHQ草案は日本の憲法研究会の草案を土台として作成されたものではなく、「原液」あるいは「源泉」と呼ばれるものが存在していることを証明しました。
この証明が意味することとは、日本国憲法は日本人が作ったものでもないし(一部の修正等を除く)、同時に占領下の支配力によって“押しつけられた”ものであることを示しています。
それを「法の秩序」の観点から判断するものが本記事である【国際法編】です。
これまで示した記事の中で国際法に照らした判断はあちらこちらで書いてきましたが、念のためにダメ押しの記事(国際法編)をここに示します。
3年前の記事『日本人を狂わせつづけている洗脳作戦』で私は以下のように指摘しました。
以下自記事より引用
重要な点をひとつ先に言うとするならば、「押し付けられた憲法かどうかの議論」において、憲法の成り立ちや手続きだけに焦点を絞った主張はナンセンスだ、と言っておきます。
「押し付けられた憲法かどうかの議論」は、日本がポツダム宣言を承諾し、独立を回復するまでの占領下で何が起きたのか、という一定の期間を有する総合的な視点に立たねば真相はつかめないということです。
つまり、GHQによる占領政策、GHQの真の目的を知らずして大日本帝国憲法(明治憲法)から日本国憲法への改正(実質的には新憲法制定)の意味(意図)を理解することは不可能だということです。
同時に国際法に弱い日本人あるいは誤解している日本人がいることが正しく判断出来ない理由であると考えられます。
また、この【国際法編】はX(旧Twitter)において“デマ”を流した「まりなちゃん」というアカウントに対する“私からの返答(返信)”でもあります。
(私は「まりなちゃん」というアカウントの投稿に対して、「それについては『国際法』の観点から判断することです。それ以外の価値判断はありません。たとえ内容に日本人の発案があったとしても」とリプしたが、当該アカウントからブロックされ議論を受け付けてもらえず、一方的に遮断された)
憲法論を間違えるということは、国家運営、政治の在り方を間違える方向にミスリードしてしまうことであり、国家の姿を間違った方向に変質させてしまう危険性があるということになる。
国家の在り方、国民の自由と人権、幸福追求を考える上で「憲法論」は必須のものであり、その根源に位置するものなのです。
原点である問題提起を示す
《アカウント名「まりなちゃん」の発言内容は間違っている》
はじめに【序編】で示した問題提起に戻ります。
X(旧Twitter)に投稿されたアカウント名「まりなちゃん」の内容は明らかに間違っています。
「まりなちゃん」と名乗るアカウントは以下の投稿をした。
X(旧Twitter)より引用
まりなちゃんのポストより引用
高市の親衛隊たちが「GHQの押し付け憲法だ!」、「アメリカが作った憲法だ!」とか言っているけどウソだよ。
今ある平和憲法は日本人によって作られたのです。
この平和憲法を護ることが私たち国民の義務なのです。
〈嘘をついているのはどっちだ?〉
上記の投稿文の問題点は、GHQ占領下で作成・公布された日本国憲法はアメリカ(主にGHQを指す)が作った憲法ではなく、押し付けでもなく、日本人が作った憲法であるから日本国民は憲法改正をせず(させず)、現憲法を維持することが国民の義務だと言っているのです。
上記の投稿文の中に複数の“間違い”が混在しています。
細かく分析、指摘します。
間違いは以下の通り。
1.「(日本国憲法は)アメリカが作った憲法」ということは「嘘」である。
2.日本国憲法は「GHQが押し付けた憲法」ということは「嘘」である。
3.日本国憲法は日本人によって作られた。
4.日本国憲法を護ることは国民の義務。
これほど酷い主張をインフルエンサーがしていることに私は驚いた。
1~3については、私のシリーズ記事『“保守の憲法論”最終結論(国際法編以前の記事)』を読んでいただければ、すでに論破していることが理解できるでしょう。それは裏返して言うと「まりなちゃん」というアカウントの発言こそが「嘘」であることを証明していることを意味します。問題は、なぜそのような嘘をつくのかということ。無知によるものなのか、思い込み(決めつけ思考)によるものなのか、はたまた何らかの意図があるのか、ということです。
4つ目の「日本国憲法を護ることは国民の義務」ということは、その中心的趣旨が屈解されています。憲法を守るべきは国家権力であり、国民は主権者として“守らせる側”に位置しています。
ただし、「まりなちゃん」が言いたかったことは高市率いる政権に改憲させるなという意味の「護る」であることは読み取れます。ですが、憲法の意義からすれば主権者である国民が“権力者に守らせる”となるのです。ですから本来の正しい主張はこうです。
「高市政権及び支持者たちが改憲しようとしているので、それを主権者である国民が阻止するべきだ!」
「改憲させないで、いまの憲法を守らせる(維持する)べきだ!」
となります。
あくまでも憲法に記された秩序を守るべきは権力者であり、国民は守らせる側なのです。
もし、「まりなちゃん」が主張しているように「憲法を護る義務が国民にある」とするならば、義務とは法的効力を持つものなので、政権に憲法改正された場合、阻止できなかった(守れなかった)国民には何らかの罪が発生することになります。
フォロワーを煽るための発言だとしても、言い過ぎを通り越した“暴言”に他なりません。
付け加えますが、私は決して高市早苗の親衛隊ではありません。むしろ高市早苗氏は即刻議員辞職をするべきだと考えている者です。誤解なきようお願い申し上げる。
根本的な問題は、日本国憲法の起草者と憲法条文の中身を切り離して考えていない点につきます。起草者が誰であるのかという問題と、憲法条文の内容が国民にとって良いか悪いかという問題は“別問題”なのです。ですが、教鞭な護憲派の人たちはこの2つの問題を分けて考えることができないのです。それが間違いの元です。
2つの国際法による判断
《占領下での憲法制定の物差しは国際法しかない》
GHQによる新憲法制定(大日本帝国憲法の改正)が正当であるか、押し付けであるかを判断する“物差し”は国際法しかありません。
国際法による判断は2つ。ひとつは「戦時国際法(ハーグ陸戦条約)」であり、二つ目が「ポツダム宣言」です。
《ハーグ陸戦条約とは?》
『ハーグ陸戦条約』とは、戦時国際法と呼ばれるもので、戦争のやり方、交戦の定義、宣戦布告、戦闘員・非戦闘員の定義、捕虜・傷病者の扱い、使用してはならない戦術・兵器、降伏、休戦、そして「占領」などを規定している戦争における国際的ルールです。
1899年にオランダのハーグで開かれた第1回万国平和会議において採択された「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約」及び「陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則」のことです。
(1907年の第2回会議で改正された)
日本国が批准したのは1911年(明治44年)11月6日で、翌年の1912年(明治45年)1月13日に公布された。
別名「ハーグ陸戦協定」「ハーグ陸戦法規」とも呼ばれています。
要するに、戦争のルール(戦闘のルール含む)を定めた国際的なルールのことです。
〈第43条【占領地の法律の尊重】について〉
『ハーグ陸戦条約(戦時国際法)』
ハーグ陸戦条約第43条【占領地の法律の尊重】
国の権力が事実上占領者の手に移った上は、占領者は絶対的な支障がない限り、占領地の現行法律を尊重して、なるべく公共の秩序及び生活を回復確保する為、施せる一切の手段を尽くさなければならない。
比較のために国際条約集の条文を以下に記す。
(ただし、本来はカタカナ表記だが、現代的にひらがな表記にしてある)
国際条約集より引用
ハーグ陸戦条約第43条【占領地の法律の尊重】
国の権力が事実上占領者の手に移りたる上は、占領者は、絶対的の支障なき限り、占領地の現行法律を尊重して、なるべく公共の秩序及び生活を回復確保する為、施し得べき一切の手段を尽くすべし。
要するに、戦争の勝利によって敵国を占領したとしても、占領中に占領地(他国)の法体系を変えてはならない、という国際法(条約)だということ。
ハーグ陸戦条約第43条とは、「占領軍の意思によって占領地の憲法等の法秩序を変更することを諫める(条件付き)国際法」です。
注意しなければならないことは、国際法上は、「宣言及び受諾」は戦争状態の終了を示すものではなく、講和条約(平和条約)等の発行によって戦争が終了する、というのが国際法上の正式な考えです。
ですから、『サンフランシスコ講和条約』又は『サンフランシスコ平和条約』の発効日である1952年(昭和27年)4月28日が正式(国際法上)な終戦の日となります。
(調印は1951年9月8日)
1952年(昭和27年)4月28日とは、GHQによる占領が終り、日本が主権を回復した日となります。
それ以前の状態(日本国憲法の制定時)は、国際法上休戦状態であり、「終戦」ではないのです。
ポツダム宣言の受諾は終戦ではないため、ハーグ陸戦条約は有効なのです。
日本国憲法はGHQによる占領期間中に行われたものであるので占領下での憲法制定は国際法違反(ハーグ陸戦条約違反)となるのです。
これが“理論的な”正しい理解です。
もし、休戦状態だからハーグ陸戦条約が無効であるならば、以下の国際法も無効となってしまい、その意味することは占領された日本人には非人道的な扱いをしてもかまわない、という論理となる。
もし、こうした主張をするならば、それは売国奴と呼ぶべきでしょう。
第45条:占領地の人民は、敵国に強制的に忠誠の誓いをなさしめられることはない。
第46条:家の名誉及び権利、個人の生命、私有財産ならびに宗教の信仰及びその遵行を尊重しなければならない。
第47条:略奪はこれを厳禁とする。
(第三款敵国の領土における軍の権力)
つまり、「休戦状態だからハーグ陸戦条約が無効」だとするならば、占領軍による略奪(強盗など)は罪ではなく、婦女子はレイプされても当然であり、子供をさらって人身売買にかけても文句を言われる筋合いではなく、脅迫して米国軍人に従わせることも罪ではないとなる。
要するに、「休戦状態だからハーグ陸戦条約が無効」だという主張は、米軍による強盗、レイプ、恐喝、人身売買、脅迫などの犯罪行為が「犯罪とはならない」と言っていることになる。これほど恐ろしい主張があるだろうか。
この間違った主張の本質は、同胞を裏切るものであり、同胞への非人道的行為を認めることと同じ意味となる。
狂っていると言える。
《ポツダム宣言》
もう一つの国際法が「ポツダム宣言」です。
国際法とは体系的な一つの法があるわけではありません。
国際法の中身は、主には「条約」であり、「国際慣習法」と呼ばれる昔から存在していた国際社会での慣習(暗黙のルール)などです。
ちなみに「宣言」も国際法の範疇にあります。
ポツダム宣言で注意しなければならないことは、ポツダム宣言とは連合国が発した条件を日本国が受諾した国際法なので、双方に遵守する義務があるということ。決して日本側だけが一方的に守らなければならないものではないことです。
これが理解できていないと、間違った解釈、理解が発生してしまいます。
ポツダム宣言第12条
前記諸目的が達成せられ、かつ日本国国民の自由に表明せる意思に従い平和的傾向を有し、かつ責任ある政府が樹立せらるるにおいては、連合国は直ちに日本国より撤取せらるるべし
〈ポツダム宣言第12条の趣旨とは?〉
ポツダム宣言は占領を終了する条件(降伏条件でもある)を突き付けたものであるが、その趣旨とは「日本国国民の自由に表明せる意思に従い平和的傾向を有し、かつ責任ある政府が樹立すること」でもあるのです。
ここで注目すべきは2点。「日本国国民の自由に表明せる意思」と「平和的傾向を有し、かつ責任ある政府が樹立する」ことです。
「日本国国民の自由に表明せる意思」と言うのですから、これが意味することは、今後の日本国の統治体制は「民主主義」であり、主権は「国民」に移るということを示唆していて、重要なことは「国民の意思」だということです。ここで言うところの「国民の意思」とは当然占領されている側である日本国民を意味します。
同時に「平和的傾向を有し、かつ責任ある政府が樹立する」ということは、軍国主義を廃した民主主義的な政治機構が成立することを示唆している。軍国主義を廃するということは軍部の独走を許した明治憲法の欠陥を修正する、つまり憲法改正が必要であり、皇軍(天皇軍隊)の存在を否定することを意味している。要するに軍国主義を廃することとは天皇制の廃止または変更を意味している。
ここに日本国憲法の特徴である「民主主義的国家への変貌(国民主権)」と「戦争の廃棄」が読み取れる。
重要なことは、占領下にあっても、占領されている側の「自由に表明された国民の意思を尊重しなければならない」ということです。
憲法制定に関することを別な表現ですると、占領されている側の「国民が望まない法体系の変更はおこなってはならない」となる。
〈ポツダム宣言の実体〉
しかし、ポツダム宣言の実体とは、日本国改造の条文であり、GHQ側が考える日本国の未来像に他ならなかったのです。
連合国がポツダム宣言に込めた意思とは以下の内容である。
書籍『日本国憲法を生んだ密室の九日間』より引用
ここで言う前記諸目的の条項とは、日本の降伏条件として書かれたものを指しているが、その中に「日本国国民を欺瞞し、之をして世界征服の挙に出づるの過誤を犯さしめたる者の権力、勢力は永久に除去せられ(六項)」「日本国の戦争遂行能力が破砕せられ(七項)」「日本政府は、日本国民の間における民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障礙を除去すべし。言論、宗教、思想の自由並びに、基本的人権の尊重は確立せらるべし(十項)」というように、実にうまく民主主義化された日本の未来像が書き込まれている。
〈日本国憲法は「日本人の自由なる意思」によって作成されたものではない〉
【日本国憲法の源泉編】で示したように、日本政府側が考えた憲法改正案は、明治憲法を少しいじっただけの保守的な改正案に過ぎなかった。当時の日本政府はポツダム宣言の条件を満たす憲法改正案を作る能力と意思はなかったのです。
ですから、真に日本国民の自由に表明された意思によるならば、GHQ草案なるものは世に出てくるはずがなかったのです。唯一GHQ草案に近い草案を作成したのが、よく知られている日本人の憲法研究会の草案だった。だが、すでに述べたが中心人物である鈴木安蔵はGHQ側の人間と接触をしており、GHQが考える憲法改正案について知っていた。だからGHQが評価するような改正草案を起草することができた。またリベラルな者たちであるがゆえに天皇制国家から民主主義的国家へ変貌する憲法改正草案を作成できた。肝心なことを言えば、憲法研究会の草案は彼らの完全オリジナルではないということです。なぜならば、GHQの憲法改正の考えを反映して起草されたからです。
日本国憲法の中身はアメリカ合衆国の政治思想の集大成であり、世界各国の憲法と国際連合の憲章などを参考にして書かれたものです。そうしたことを当時の保守層である日本政府の人間がするはずがないし、またそうした能力もない。人権のわからない当時の保守層である人間たちには、日本国憲法にある人権条項は書けるはずがない。なぜならば、国民の人権とは天皇の下にあるからと考えていたから。
「日本国憲法が日本人の自由なる意思」によって作成されたものではないことは、すでに示した(【国際法編】以前の記事で)。なので、ここでは割愛する。
重要なことは、当時の日本政府の憲法草案をGHQが破棄したことであり、日本政府の自由なる意思を排除したことです。これはポツダム宣言に反することである。だからこそ、新憲法草案を日本政府が作成したと国民に発表し、修正作業を日本政府(議会等)で行わせた。これを隠蔽というのです。
ちなみに、日本政府の人間もポツダム宣言が示す「自由に意思を表明する日本国民」です。
【国際法編②】につづく
参考書籍
書籍名:『日本国憲法を生んだ密室の九日間』
著者名:鈴木昭典
出版社:創元社
書籍名:『国際条約集』
編集:植木俊哉、中谷和弘
出版社:有斐閣
題材記事
記事名:『敗戦後の日本にGHQが新憲法を作らせたのは、国際法違反ではなかった件』
最後までお読みいただき、ありがとうござりんした!

