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『国際法から観た領土紛争2【尖閣諸島編(前編)】~「領土不可侵」「一領域、一国家」が国際法のルールであり、中国の公船は国際法違反をしている!~』

はじめに

日本が抱えるもう一つの緊急性のある領土問題(紛争)である「尖閣諸島」を取り上げます。
多少前回の【竹島編】と重複する部分もあるかと思いますが、日本国と日本人にとって重要な問題なので多くの方が興味関心を持っていただきたいと思っています。

このカテゴリーは「国際法から観た世界」なので、国際法を物差し(指針)として考えてみます。
このブログを読んでいる方のなかにも国際法に詳しい人もいるでしょう。
しかし、国際法など全然知らない、という方もこのカテゴリーを読み続けているうちに自然と国際法の知識が身につくようになると思います。

さて、「尖閣諸島問題」は国際法から観てどんな問題があるのでしょうか?

国際法とは何か?

《領土問題の解決には国際法によるべき》

国際法の基礎として、「国際法とは国家間のルール」ということは基礎の基礎として抑えておいてください。
領土問題などの国際紛争問題は原則、「国際法」に基づいて判断、処理するべきなのです。
なぜなら、国内法に基づいて各国が判断、処理すれば、紛争は解決する術(すべ)がなくなり、最悪、武力による解決しかなくなるからです。

我が国(日本)における緊急の領土問題とは2つ。
「竹島」と「尖閣諸島」です。

国際法の基礎知識(領域の定義)

《領域とは?》

国際法では、「領域」という表現を使用しますが、領域を構成する要素は3つあります。
『領域』とは、「領土」「領水」「領空」の3つです。

今回は尖閣諸島の問題に関する「領水」に絞って説明します。
『領水』は、「内水」「領海」「群島水域」の総称です。

「内水」とは、領海から陸地側にある水域のこと(川や湖など)。
「領海」とは、沿岸国が基線から12海里(1海里は1853メートルなので約22㎞)を超えない範囲で設定した水域のこと。
「群島水域」とは、大洋のなかの一群の島々(群島)において、その最も外側に位置する島を結ぶ直線基線で掻っ込まれる内側の水域のこと。
群島水域は、独自の法的地位をもつ領水。

〈補足説明〉

「領海」には、「無害通航権」が認められています。
「無害通航権」とは、船舶が他国の領海内を通航できる権利のこと。
(沿岸国の安全や平和を害することなく、迅速に通行する権利)
ですから、領海においては「領域主権」が一定の範囲で制限されることになっています。
領海は国家領域の一部ですが、すべての国の船舶は外国の領海において無害通航権を有しています
ただし、それは沿岸国の平和と秩序、または安全を害しない範囲においてです。
また、漁船は外国の領海で漁業を行うことは禁止されています。

《重要論点》

すべての国の船舶は外国の領海において無害通航権を有していますが、それは沿岸国の平和と秩序、または安全を害しない範囲においてなのです。
つまり、中国の公船が尖閣諸島付近(日本の領海)において行っている行為は、日本の領域権原への侵害であり、自分勝手に秩序を乱し、安全を脅かしている国際法違反なのです。

国際法から観る領土問題のポイント1

《国際法における領域の原則とは?》

国際法における領域の原則には以下のものがあります。

1.『領土保全原則』
2.『一領域、一国家』

〈「領土保全原則」とは?〉

領土保全とは国家の領域(領土)の現状が維持される状態をいいます。
他国はその国の領土保全を尊重しなければならない。
別の言い方をすると、他国はその国の領域を乱してはならない、ということです。
要するに、領土保全の原則とは、「国境を越えて侵入してはいけないという国境不可侵の原則」なのです。

これは個人の住宅においても同じですね。
勝手に他人の所有する土地に侵入すれば国内法でも「住居不法侵入罪」として罪となります。
それは国際社会においても同じなのです。
個人と個人に法のルールがあるように、国家間の国際社会にもルールがあるのです。

〈「一領域、一国家」とは?〉

これは文字通りなので、読んで意味はすぐに理解できるでしょう。
この原則は、「ひとつの領域にはひとつの国家(領域主権)しか存在しないという原則」です。
裏返すと「ひとつの領域に2つ以上の国家の支配はありえない」ということです。

ですから、尖閣諸島は日本の領域であり、中国の領域でもある、なんていうことはありえないのです。
国際法では、「ひとつの領域はひとつの国家が主権を持つ」という原則なのです。

ただしこれに反することがあります。
それは「共同領有」と「租借(そしゃく)」です。
共同領有は南極が有名です。
租借で分かりやすいのが返還前の香港(1997年返還)でしょう。
しかし、それは例外であって、原則は「一領域、一国家」+「国境不可侵」が大原則=国際社会のルールなのです。

尖閣諸島の問題

《尖閣諸島は日本の領土》

尖閣諸島(沖縄県石垣市)は、沖縄の南西、東シナ海に浮かぶ島々です。
ある意味で韓国による竹島問題よりも、中国との尖閣諸島問題の方が緊急性と危険性は高いと言えるでしょう。
この問題は、明らかに国際紛争の種です。

〈外務省(政府)の公式見解〉

外務省のHPから政府の尖閣諸島における「公式見解」を紹介します。

外務省HPから引用

引用1

日本政府は、1895年1月、他の国の支配が及ぶ痕跡がないことを慎重に検討した上で、国際法上正当な手段で尖閣諸島を日本の領土に編入しました。
第二次世界大戦後、サンフランシスコ平和条約においても、尖閣諸島は日本の領土として扱われた上で、沖縄の一部として米国の施政下におかれました。また、1972年の沖縄返還協定によって、日本に施政権を返還する対象地域にも含まれているなど、尖閣諸島は戦後秩序と国際法の体系の中で一貫して日本領土として扱われてきました。

1972年沖縄返還協定により、地図上の直線で囲まれた区域内のすべての島が返還されたこの対象区域に尖閣諸島も含まれている。( 写真は外務省HPより)

引用2

尖閣諸島の編入の後、日本の民間人が日本政府の許可の下、尖閣諸島に移住し、鰹節工場や羽毛の採集などの事業を展開しました。一時は、200名以上の住人が尖閣諸島で暮らし、税徴収も行われていました。

引用3

中国政府は、1895年の尖閣諸島の日本領への編入から、東シナ海に石油埋蔵の可能性が指摘され、尖閣諸島のに注目があつまった1970年代に至るまで、実に約75年もの間、日本による尖閣諸島に対する有効な支配に対し、一切の異議を唱えませんでした。サンフランシスコ平和条約で尖閣諸島が日本の領土として確認されて米国の施政下に置かれ、その一部を米国が射爆撃場として使用しても、この間、尖閣諸島は、中国共産党の機関紙や中国の地図の中で、日本の領土として扱われていました。

1958年に中国の地図出版社が出版した『世界地図集』「尖閣諸島」を「尖閣群島」と明記し、沖縄の一部として取り扱っている。 (写真は外務省HPより)

引用4

我が国の立場は一貫しており、中国との間で尖閣諸島に関する「棚上げ」について合意したという事実はありません。この点は、公開済みの外交記録等からも明らかです。
また、中国が1992年に尖閣諸島を中国領土と記載した領海法を制定したことや、2008年以降、公船を尖閣諸島沖に派遣して領海にも度々侵入するといった力による現状変更を試みていることは、「棚上げ」合意が存在したとする中国自身の主張ともそもそも相矛盾するものです。

『外務省HP』へのリンク

《ポイント》

〈日本国側の根拠〉

1895年1月、他の国の支配が及ぶ痕跡がないことを慎重に検討した上で、国際法上正当な手段で尖閣諸島を日本の領土に編入した。
サンフランシスコ平和条約において尖閣諸島は日本の領土として扱われた。
占領時には沖縄の一部として米国の施政下におかれた。
1972年の沖縄返還協定によって、日本に施政権を返還する対象地域にも含まれている。
尖閣諸島の編入の後、日本の民間人、尖閣諸島に移住し200名以上の住人が尖閣諸島で暮らしていた(一時)また税徴収も行われていた。
(税徴収は国家の主権です)

〈中国側の根拠〉

中国側は「1978年の日中平和友好条約において取り扱われておらず、棚上げ状態となっている」と主張。
つまり、中国との間で尖閣諸島に関する「棚上げ」について日本が合意したと主張。
中国が1992年に尖閣諸島を中国領土と記載した領海法を制定したことで、明確に尖閣諸島が中国領と主張。

《中国の主張への反論1》

1895年の尖閣諸島の日本領への編入から、1970年代に至るまで、実に約75年もの間、日本による尖閣諸島に対する有効な支配に対し、一切の異議を唱えていない。

→これは国際法における「黙認」に該当します。
さらに「禁反言」となります。
尖閣諸島を日本の領土とした地図を作成していたにも関わらず(また自国の領土だとは主張していない)、1992年になって、「尖閣諸島が中国の領土だ」と前認識を覆すことはルール違反以外の何ものでもありません。
国際法違反です。

1978年の日中平和友好条約において尖閣諸島問題は「棚上げ状態」となった。

→国際法(条約)においては必ず該当国の合意が形成されなければなりません。
たとえ片方の国が主張しても、相手国の合意がなければ国際法のルール(条約)とはなり得ません。
そもそも1978年の日中平和友好条約において「尖閣諸島問題」は出ていないのです。
つまり、国際ルールに当てはめれば、中国はこの時点で日本の尖閣諸島領有権を認めたことになります
「領有権問題が出ていないから、領域問題が棚上げになった」という主張は理論として滅茶苦茶であり国際法に照らしてもあり得ません。

リンク先

「尖閣諸島」に領海侵入…中国海警と海上保安庁、緊迫の攻防(2021年1月14日放送「news every.」)

「海上保安庁の警護で中国船寄せ付けず 石垣市の尖閣調査」

『【後編】自国の領域と国民を守る軍隊が正しく機能しなければ、国家は他国から侵略され、いずれ支配される運命となる!』につづく。

最後までお読みいただき、ありがとうござりんす!

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