まず先に『【前編】【中編】【後編1】【後編2】』をお読みください。
想定問答に先立つ基礎知識
《GHQとは何か?》
「日本国憲法は押し付け憲法であるかどうかの議論」において絶対に欠かすことのできない組織が「GHQ」です。
では、GHQとは何でしょうか?
GHQの正式名称は、「連合国軍最高司令官総司令部」です。
みなさん当然ながら知っていますよね。
でも、その意味を本当は理解していないのではないでしょうか?
理解に捻じ曲げが入っていないか、誤解していないか、それを現代の日本人は点検する必要があります。
では、もう少し詳しく説明します。
GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)は、第二次世界大戦終結に伴うポツダム宣言を執行するために日本において“占領政策”を実施した連合国軍の機関(組織)。
連合国軍といっても実質はアメリカ合衆国を中心とした日本国を占領するための機関です。
上部組織に「極東委員会」があり、下部組織に「参謀部」「幕僚部」があることでわかる通り、れっきとした軍事機関なのです。
意味分かりますか?
「軍事」の一環としての機能を持った組織と言うことです。
決して忘れてはならない、又は誤解してはならないことがあります。
それはGHQが行ったことは「占領政策」であるということです。
決して日本独立運動でも、日本復興活動でもありません。
あくまでも原子爆弾投下によって降伏した敵国(日本)に乗り込んできて、敗戦国の戦後の処分を行うためにやってきた軍事組織がGHQだということです。
問題は、敗戦後の処理とは一体何なのか?
その目的は何なのか?
ということです。
軍事組織には必ず目的があります。
軍事行動であるからには必ず作戦があるのです。
それを平和ボケした現代の日本人は気がつくべきです。
《ポツダム宣言とは?》
ポツダム宣言とは、1945年(昭和20年)7月26日にイギリス、アメリカ、中華民国の名において日本に対して発された全13か条からなる“宣言”。
日本への降伏要求の最終宣言と呼ばれるもの。
日本は同年8月14日にこの宣言を受諾し、9月2日に調印・即時発行(降伏文書)に至った。
知っての通り、昭和天皇の玉音放送は宣言受諾の翌日(15日)になされた。
補足的に付け加えるならば、終戦の日を「ポツダム宣言を受諾したこと」とする意見がありますが、それならば14日となるはずですが、多くの国民がなぜか15日だと勘違いしています。
そこには思惑があることに気がつくべきです。
8月15日は、ポツダム宣言を受諾した日でもなく、国際法による平和条約を結んだ日でも発効日でもありません。
ですから8月15日を「終戦の日」と呼ぶことは法的な根拠はないのです。
日本人が知っておかなければならないことは、「ポツダム宣言とは、占領軍の撤退条件を示したもの」だということです。
間違ってはいけないのは、ポツダム宣言を受諾したことが「終戦」ではないことです。
国際法にとって終戦とは「講和条約(平和条約)の締結」によるものなので、この時点では国際法による終戦ではありません。
終戦ではなく「休戦」となります。
または「軍が、戦闘命令を出さない意思を示した状態」です。
《ハーグ陸戦条約とは?》
『ハーグ陸戦条約』とは、戦時国際法と呼ばれるもので、戦争のやり方、交戦の定義、宣戦布告、戦闘員・非戦闘員の定義、捕虜・傷病者の扱い、使用してはならない戦術・兵器、降伏、休戦などが規定されている国際法です。
1899年にオランダのハーグで開かれた万国平和会議において採択された「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約」及び「陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則」のことです。
別名「ハーグ陸戦協定」「ハーグ陸戦法規」とも呼ばれています。
要するに、戦争のルール(戦闘のルール)を定めた国際的なルールのことです。
〈戦争にも法の精神があるべき〉
日本人のなかでも戦争というものを誤解しているまたは無理解があると思われます。
それは「戦争にはルールがある」ということです。
その戦争のルールを定めた代表的なものがハーグ陸戦条約であり、戦時国際法と呼ばれるものです。
ですから、本来の法の意味からすれば、戦時国際法に違反してはならないのです。
もし、戦時国際法に違反していたならば、たとえ戦勝国であってもその罪は糾弾されなければならないのです。
それが「法の精神」であるはずです。
しかし、実際は敗戦国の国際法違反は激しく糾弾されるが、戦勝国の国際法違反は無視されているというのが現実です。
そのことを深く理解してください。
《日本国憲法起草のスケジュール》
GHQが起草(作成)した日本国憲法は、異例の短さで出来上がったものです。
GHQのホイットニー民政局長が部下に「すべての仕事に優先して極秘裏に憲法草案を作成しろ」と命令しています。
ホイットニー民政局長の命令が下ってから“たったの6日間”で憲法草案が作成され、マッカーサーに提示されています。
1946年(昭和21年)2月4日、ホイットニー民政局長が命令を出す。
2月10日、マッカーサーに提出される。
2月13日、日本政府に提示される。
2月26日にGHQが日本国憲法の草案に沿った新憲法を起草することを決定。
これは“異例の短さ”、または“異常な速さ”といえるでしょう。
もし、日本と言う国家の民族性、伝統、習慣、文化などを丹念に調べ上げ、日本国にとって最適と思われる新しい憲法を作成しようとしたならば、6日間で起草できるはずがありません。
日本側にも憲法改正の動きはありました。
重要なことは、GHQが日本側の改正案を拒否したことです。
結局、日本国憲法の実態は、様々な国の憲法の“良いとこ取り”の憲法だったのです。
特に第9条については、日本のオリジナルではなく、GHQオリジナルでもなく、パリ不戦条約の引用であることは評論家の小室直樹氏が指摘しています。
「日本国憲法は押し付け憲法なのか?」、想定問答
恐らくと前置きしますが、前回までの記事の内容も否定して「日本国憲法は押し付けではない」という論を展開する人たちがいると思われます。
その主な主張を取り出し、「想定問答」としてここに示します。
扱う内容は難しいものですが、この問題を正しく認識している人としていない人では、いま現在起きている社会問題に対しての認識が違ってくるので、非常に大切なものであることを伝えておきます。
《ハーグ陸戦条約第43条》
まずは、論点の重要情報であるハーグ陸戦条約第43条を先に提示します。
『ハーグ陸戦条約(国際法)』
ハーグ陸戦条約第43条
国の権力が事実上占領者の手に移った上は、占領者は絶対的な支障がない限り、占領地の現行法律を尊重して、なるべく公共の秩序及び生活を回復確保する為、施せる一切の手段を尽くさなければならない。
要するに、戦争の勝利によって敵国を占領したとしても、占領中に占領地(他国)の法体系を変えてはならない、という国際法(条約)。
日本国憲法は押し付けられた憲法であるかどうかの議論において核を成す国際法が第43条です。
もう一度言います。
ハーグ陸戦条約第43条とは、「占領軍が占領軍の手によって憲法を新たに作る行為を禁止(違反行為と)する国際法」です。
《想定問答1=ハーグ陸戦条約の効力は無効?(1)》
〈想定される指摘1〉
ハーグ陸戦条約は交戦中の規定であり、ポツダム宣言を受諾した時点で日本の戦争は終結しているので、ハーグ陸戦条約の効力は無い。
よって、日本国憲法は押し付けられた憲法ではない。
(ウィキペディアから参照)
〈指摘への反論1〉
この文(論)には、詐欺師的な騙し手法が使われています。
その手法とは、「論の一部に嘘(間違い)がある(入れる)」という手法であり、それによって「結論を捻じ曲げる」という詐術です。
「ハーグ陸戦条約は交戦中の規定であり」→正しい。
「ポツダム宣言を受諾した時点で日本の戦争は終結している」→「戦争の終結」は間違い。
なので、当然の如く結論である「ハーグ陸戦条約の効力は無い」も間違いとなります。
ポツダム宣言は“宣言”でしかなく、「これ以上戦争をすることへの警告」ととらえるべきです。
国際法上は、「宣言(又は受諾)」は戦争状態の終了を示すものではなく、講和条約(平和条約)等の発行によって戦争が終了する、というのが国際法上の正式な考えです。
ですから、『サンフランシスコ講和条約』又は『サンフランシスコ平和条約』の発効日である1952年(昭和27年)4月28日が正式(国際法上)な終戦の日となります。
(調印は1951年9月8日)
1952年(昭和27年)4月28日とは、GHQによる占領が終り、日本が主権を回復した日です。
それ以前の状態(日本国憲法の制定時)は、国際法上休戦状態であり、終戦ではないのです。
結論、ポツダム宣言の受諾は終戦ではないため、ハーグ陸戦条約は有効である。
日本国憲法はGHQによる占領期間中に行われたものであるので占領下での憲法制定は国際法違反(ハーグ陸戦条約違反)となります。
よって、上記の指摘は間違いです。
《想定問答2=ハーグ陸戦条約の効力は無効?(2)》
〈想定される指摘2〉
ハーグ陸戦条約付属書の第三款(42条以降)は交戦中の占領政策に関する規定であり、休戦後は拘束されない。
(ウィキペディアから参照)
〈指摘への反論2〉
指摘1とかぶりますが取り上げます。
「交戦中の占領政策に関する規定(ハーグ陸戦条約が)であり、休戦後は拘束されない」
こういう論理を“詭弁”と言います。
こうした主張をする人の論理は、結論ありきの捻じ曲げの詭弁術なのです。
では、反論します。
休戦したとしても、日本軍の一部が暴走し、どこかで占領軍と戦闘を始めてしまった場合(軍人の独断による暴走という意味)どうなりますか?
ポツダム宣言を受諾し休戦状態となったから、ハーグ陸戦条約(第43条等)が有効とならなければ、占領期間に起こった暴徒に対して国際法上の捕虜等の扱いをしなくてもいいとなります。
つまり、休戦状態だからハーグ陸戦条約が無効であるという論理は、「憲法を制定」以外の国際ルール(正確には第42条以降)をも無効だというに等しいのです。
それが意味することは、国際法の空白期間となり、無秩序(国際法の効力がないやりたい放題ができる状態)を意味するのです。
上記のような論理を振り回す人は、「日本国憲法は押し付け憲法ではない」という結論に無理やり持っていきたいがために、論理を捻じ曲げているのです。
正しい見解は、休戦状態は終戦ではないので、国際法に効力はあります。
GHQによる占領とは、“軍事占領”であり、軍事占領とは戦争の一形態であり、戦闘の延長線上にあるものです。
軍事占領下にあった期間に憲法を制定することは「押し付け」であり、国際法違反です。
よって上記の指摘は間違いです。
《想定問答3=憲法制定手続き》
〈想定される指摘3〉
日本国憲法はGHQの強力な指導の下で制定したものであるが、当時の世論調査では国民は歓迎しており、衆議院と貴族院における審議、及び衆院選によって国民が自主的に選択したので、実質的に日本国の手で作ったとほぼ同義である。
〈指摘への反論3〉
まぁ~、よくこうした苦しい言い訳を考えつきますよね!
詭弁師がどうやって騙すのかというと、都合の悪い点から目を逸らし、捻じ曲げた論点のみに焦点をあてることで騙そうとするのです。
別な言い方をすると詐欺師の手法です。
真実の中に嘘(作り話)を混ぜて騙す手法です。
確かに日本政府によって改正手続きを行っていることは間違いありません。
しかし、上記の指摘の問題は「軍事占領下にあるという大前提」が欠けていることです。
GHQは、1945年9月10日に「言論及び新聞の自由に関する覚書」「日本報道取り締まり方針」などのプレスコードを発し、言論統制を行なっています。
GHQの占領政策とは、軍事力を背景にして行われている占領統治です。
直前において、広島、長崎に原子爆弾を落され、日本国民は戦意を失っており、むしろ戦争に恐怖を感じています。
そのなかで軍隊によって占領され、言論統制が行われたなかで、日本人が本音など言えるわけがありません。
軍事占領下の中で憲法制定に表立って反対できない状況であることは明らかです。
また、万が一国民がGHQによる新憲法制定を歓迎していたとしても、「憲法改正の手続き」及び「憲法改正の正当性(必要性)」を立証するものではありません。
そうした証拠の文章があれば見てみたいものです。
日本政府によって改正手続きがなされたといっても、それはそうするしかなかったからそうしたのであって、もしGHQがいなければ改正はしなかったでしょう。
軍事占領下の憲法の改正手続きにおいては、占領軍に責任があると考えるのが正しい帰結です。
国民が自主的に受け入れたなどというのは、現代にも通じる情報操作であり、洗脳でしかありません。
それを証明する文書でも残っているのでしょうか?
結論、改正手続きを日本政府が行ったとしても、それは軍事占領下の指導(強制)によってなされたものであり、その意思はGHQにあり!
軍事占領下で起こった憲法の改正手続きの責任は占領者にあり!
よって、上記の指摘は間違いです。
《想定問答4=日本国憲法は日本の憲法研究会の「草案」が参考とされている》
〈想定される指摘4〉
日本国憲法は日本の憲法研究会が発表した「憲法草案要綱」をGHQが参考として制定したものであるから、押し付けではない。
GHQが草案起草にあたって国内外の憲法案等を参考にしていたなかに日本の自由民権思想の研究者であった鈴木安蔵らの憲法研究会が提出した草案があったので、日本側の意思が入っていると見ることが出来るので、押し付けられた憲法ではない。
〈指摘への反論4〉
あの手この手で詭弁を弄する者が現代の日本に溢れています。
特に、左翼思想家と反日勢力です。
確かにGHQは国内外の憲法を参考の一つとして日本国憲法草案を作成しました。
しかし、日本の憲法研究会の内容が一部反映されているから軍事占領下に制定された憲法が押し付けではない、という論理にはあまりにも論理の飛躍がありすぎます。
「草案の一部に日本の憲法研究会の憲法案が参考にされたこと」と「軍事占領下での新憲法制定に正当性があるかどうか」は別の問題です。
上記の指摘は、本来別の議論であるものを無理やり結び付け、ごねてそれらしくみせている論調にしか過ぎません。
マッカーサー草案は日本のみならず複数の国の憲法を参考にして作成されたものであり、だからといって「押し付けではない」という反証とはなり得ません。
それとこれとは別問題です。
よって、上記の指摘は間違いです。
《想定問答5=押し付けられたのは当時の政府、国民は賛成していた》
〈想定される指摘5〉
日本国憲法を押し付けられたのは当時の政府であって、国民の多くはこの草案に賛成していたので、押し付けられた憲法ではない。
〈指摘への反論5〉
これも顎が外れそうなほど呆れた詭弁ですね。
こういう論調を真面目に語る人物の憲法論を信じてしまえば「邪見(悪見)」が入ってきますので注意が必要です。
まず、日本国民が賛成していたという資料(文章)がどこにあるのでしょうか?
勝手な想像や捏造は止めてもらいたい。
当時は、軍事占領下にあって、日本全体が言論統制(検閲、焚書)されていたので、積極的に反対などと言えるはずがありません。
事実は、厳格な言論統制によって、日本擁護・戦争肯定論は潰され、米国への批判は封じられています。
仮に一部に賛成の声があったとしても、それが日本国民全体の声のように主張するのは詐欺師的論理と言えるでしょう。
主権がある国家においては、憲法の制定とはその国家の政府の手で行うものであって、一国民が行うものではありません。
肝心なことを示します。
政府=国家。
国家が決めたことは日本国民にも該当する。
これが法の論理的帰結です。
憲法に限らず政府が決めたことは国民の賛成、反対の声があろうが、“その国民を縛るもの”です。
たとえ「悪法」であっても法としての秩序を与えるものなのです。
ですから、「押し付けたのは当時の政府であって…」という論理は詭弁でしかありません。
政府に押し付けたのならば、それは日本国に押し付けたことであり、日本国に押し付けたということは日本国民に押し付けたことなのです。
(指摘の論調を活かして反論をすれば)
よって、上記の指摘は間違いです。
《まとめ》
たとえ休戦状態であっても終戦ではないので国際法は有効であり、軍事占領下での憲法改正は国際法違反となります。
国際法の正式な終戦とは、「講和条約(平和条約)」の発効日です。
ですから、GHQ占領期間は、終戦にあたらず、国際法の効力は有効です。
また、当時の日本は、ポツダム宣言を受諾した後も、明治憲法(大日本帝国憲法)を変更する意図はありませんでした。
(特に、基本原理である天皇制、権力集中、基本的人権の否認に対しての変更は意図していなかった)
よって、GHQが主導して行った憲法改正は国際法違反であるので「押し付け」どころの騒ぎではなく非道の行為と呼べるものです。
『【追記編(2)】GHQの洗脳から目覚めることなくして、DSと戦う術(すべ)は持ちえない!』に続く。
最後までお読みいただき、ありがとうござりんした!