【驚きの10日間連続の全館休業をするホテル】
大分県別府市にある老舗ホテルの杉乃井ホテルが今年(2020年)1月15日から23日まで10日間連続で全館休業する。
しかも、この取り組みは3年連続。
杉乃井ホテルは、人気がなくお客が来ないから連続休館にするわけではないのです。
同ホテルは、別府湾を見下ろす高台に立つ、全館満室が当たり前の人気ホテルなのだ。
そうしたホテルが10日連続の休館をするというのは、世間に大きな影響を与えることであろう。
そもそもホテル業界は連休を取りづらい環境にある。
これはサービス業全体に共通する悩みだ。
サービス業に従事する職業の人は、世間の人が休んでいるときに働き、逆に世間の人が働いているときに休むといった環境が多い。
それも連休が取りにくく、大型連休など無縁の人も多い。
こうした中で杉乃井ホテルは、「働き方改革」に本気で取り組んでいるのだ。
10日連続の休館をすることでホテル側は数億円(4億円と言われている)の減収が見込まれるという。
それでも杉乃井ホテルは10日連続の休館に踏み切ったのだ。
しかも単に連続の休館というだけではなく、休暇中に従業員がホテルサービスの仕事につながる場所に行く視察旅行制度を導入した。
会社が半額以上の旅費を支給するという。
実にあっぱれ!
【杉乃井ホテルの働き方改革の理由】
杉乃井ホテルが閑散期とはいえ、10日間連続で全館休業する理由(思い)はなにか?
佐々木総支配人は報道陣にこう語った。
「お客様の満足度にひたすらこだわってきたが、社員の満足度にも力を注がないといけない」
「従業員のハッピーが、お客様のハッピーに」
という思いからなのだ。
以前は、年末年始の繁忙期後の1月中旬に5日連続で休館していた。
だが、働いている社員だけでなく、その家族のことを考えて10日間連続の休館に踏み切ったのだ。
実にあっぱれだ。
【杉乃井ホテルの優れた経営戦略】
杉乃井ホテルが行った働き方改革は世の流れに従ったことには違いないが、それだけではない大きな意味があると言える。
杉乃井ホテルは連休設定の影響で、新卒採用の応募者が前年の1.5倍となったという。
これは単に1.5倍というだけでなく、人材の質も上がっていることが予想される。
良い人材を採用したいホテル側にとってはありがたい話だ。
ホテル業界に限らず現在の日本社会は人口減少により新たな人材の確保に苦労している。
マスコミの報道を見ると、10日間連続の休館をすることで数億円の損失がでることに注目しているようだ。
マスコミには「損か得か」という理論しかないのだろうか?
利益最優先の発想しかないのだろうか?
杉乃井ホテルが取った連続の休館には経営手法から見ても優れた手法なのだ。
10日間連続休館(休暇)を取る意味は?
①従業員が心身ともにリフレッシュすることが出来る。
②従業員の家族まで満足(喜び)を得られる。
③連続休暇の期間に旅行することで旅行者の目線を得ることができ、それがホテルの仕事に役立つ。
④優秀な人材が多く応募してくるので、人材の確保ができる。
⑤従業員を大事にするホテルという評判は、訪れるお客の関心を呼び込み、新たな新規顧客を創出する。
このように数億円の売り上げをカバーする以上のものがあるのだ。
テレビ局は視聴率、紙媒体のマスコミは購買者数という売り上げ至上主義に陥っているため、杉乃井ホテルの経営戦略が読み取れていないようだ。
目先の利益ばかり追っていると、大きな利益を逃してしまうのだ。
要は、10日間連続休館で生まれる損失以上に得るものがあるということなのだ。
だが、目先の利益しか見えない者にとってはそれがわからないのだろう。
【ご意見番が考える経営とは】
顧客の満足だけを考える時代は終わりました。
ただ、立派な経営理念を掲げても絵に描いた餅みたいでなんの役にも立ててない企業が多すぎます。
「顧客満足を最優先」などと口では言っていても、実際は会社の都合を優先している企業がほとんどではないでしょうか。
つまり、顧客の満足さえ与えられない企業がたくさんあるということです。
これではいくら募集をしても人材も集まらず、顧客も増えずに、事業は発展しないでしょう。
これからの時代は従業員の幸福を真剣に考える時代なのです。
事業とは、多くの人の協力なくしては成り立ちません。
仕入れ先、取引先、そしてお客様。
お金をくれるお客様のことはどの会社でも大事にする意識はあるでしょう。
少し立派な企業なら「取引先」「仕入れ先」などの協力会社を大切にします。
そして一番蔑ろにされてきたのが「従業員(社員)」です。
いままで従業員(社員)の満足(幸福)を本気で取り組んできた会社は意外に少ないのではないでしょうか。
「社員が大切」と言いながら、肝心なところでは会社の都合を社員に押し付けてきたのではないでしょうか。
では、なぜ従業員満足が大切なのでしょうか?
企業で働く従業員が満足(幸福)して働くと「効率があがる」「イキイキと働く」「愛社精神が強くなる」「創造的意見やアイディアが増える」「離職率が下がる」「就職者の応募が増える」「社会的信用を得る」など、多くのメリットが発生します。
なにより長期休養は心と体をリフレッシュさせます。
長期休暇があるのとないのでは、まったく違ってきます。
サービス業に限りませんが、休日返上で働いたり、長期休養の取れない仕事をしていると「疲労が溜まる」「ストレスを抜くことができない」「仕事以外の喜びを得ることができない」
とったことになり、ミスが起きたり、モチベーションが下がって効率が悪くなります。
杉乃井ホテルのように連続休暇を取ることができれば、しっかり充電された従業員がイキイキと働くことができ、お客さまの満足のために働くことができるのです。
つまり、従業員の満足はお客の満足に直結しているのです。
このことを心の底から理解している経営者は従業員を大切にする経営を心掛けるのです。
経営において大切にしたい思考は「与える」ということです。
経営者が従業員に「働くことの満足感」「家族を養い有意義な生活を送れる満足感」を与えることが大切だということです。
経営者から与えられた従業員は、お客様の満足や喜びをつくり出そうとします。
企業が提供するサービスや製品が顧客の満足や喜びを与えることができたなら、顧客はファンになり、新規の顧客も増えていきます。
こうした循環が作られることで企業は発展していくのです。
人材不足に悩む企業、停滞している企業は、杉乃井ホテルを見習ってみてはいかがでしょうか。
世直しご意見番は、従業員の幸福を大事にする企業が増えることを期待するでありんす!
「従業員満足が顧客満足をつくり出す!」
「従業員を大切にする杉乃井ホテルに、あっぱれ!」
お読みいただき、ありがとうござんした!