『子どものしつけ(教育)で悩む親たちにエールを送る!』

【子育ての環境が大きく変化した】

昨年12月厚生労働省で体罰にあたる行為を具体的に示すガイドラインが検討された。

『指針案で示された体罰の例』

言うことを聞かないので、ほほをたたく。
いたずらをしたので、長時間正座させる。
他人の物を盗んだので、お尻をたたく。
宿題をしなかったので、夕飯を与えない。
(厚生労働省「体罰等によらない子育ての推進にかんする検討会」資料より)

この指針を聞いた子育て中の母親からの感想にこんなものがあります。
「これが虐待と言われたら、みんな虐待してるってなってしまう」

また、ある母親は「わたしは教えるためにたたきます」「指針を決められても、わたしの考えを通す」と自らの教育の信念を明らかにしています。

おそらく虐待のニュースを見て、心を痛めている親たちは非常に多くいると思われます。

そもそも「しつけ」って、なんなのでしょうか?
躾という定義も各家庭、それぞれの親などで違っているのではないでしょうか?

【子育てで悩み苦しむ親が増えている】

上記のガイドラインを知った親(ほとんどは母親)は、喜ぶよりも困惑または心を痛めています。
なぜなら、そのガイドラインに多くの親が当てはまってしまうからです。

「イクメン」という言葉が使われるような世の中になりましたが、子育てはいまでも母親が中心です。
父親は母親の子育ての補助的存在に近いと言えます。
これは両親揃っている家庭の場合です。

母子家庭では、一家を支える収入を母親が得なければならず、女性が働きながら同時に子育てをすることになります。
母子家庭の子育ては体力的にも経済的にも過酷です。
もともと子育ては重労働な上に過度なストレスがかかるのです。
周りに支援・援助してくれる人がいなければ、どうしていいか分からず悩みのなかに置かれてしまうこともよく見られる光景です。

父子家庭でも父親が働きながら子育てをしなければなりません。
基本的に男性は女性よりも子育てがヘタと考えた方がいいでしょう。
男性は組織的な思考が強いからです。
だから、父子家庭で子育てをしている父親は、それこそ死に物狂いで子育てをしていると言っていいでしょう。
悪戦苦闘の連続なのです。

どの親も試行錯誤、迷路を彷徨うがごとき歩み、苦悩の連続を抱えながら子育てをしているのです。
そこへ持ってきて今回のガイドラインは子育てをする親(多くは母親)を困惑させています。

政府は「子供を守るため」ということで動いたのでしょう。
ですが、それが本当にすべての子供を守るためなのでしょうか?

子どもはひとりでは生きていけません。
育ててくれる親の存在が必要です。
子育てとは親の存在と切り離して考えることは出来ません。
子どもの幸せと親の幸せは一体のものです。

子どもを虐待死させることは絶対に許されないことです

ですが、それと「すべてのしつけ」を一緒にしてしまうことは、果たして正しいことなのでしょうか?
そこには知恵の不足があるように思えて仕方がありません。
子育てに対する勘違いがあるように思えます。

【子育ての悩みは多種多様】

朝なかなか起きてこないので学校に遅れてしまう。
ゲームばかりして宿題をやらない。
何度注意しても部屋を片付けない。
叱られるとすぐに言い訳ばかりする。
イジメをしている。
親に暴言を吐く。
万引きをしている。
何事にも無気力で将来が心配。
だらしない服装をしている。
兄弟喧嘩ばかりしている。

これらはどこの家庭でも見られる子育ての姿です。
子育ては経験しないとわからない苦悩の連続なのです。

なのに、マスコミを中心とした教育に関するニュースのほとんどは悪いものばかりです。
たいていは虐待のニュースです。
子どもの年齢にもよりますが、マスコミ報道にはある法則があります。
それは片方を善者とし、もう片方を悪者として取り上げることです。

親の子どもへの虐待(体罰)ばかり報道します。
イジメをする子どもの悪行、親に暴力を振るう子どもの悪行、ゲーム依存になり毎日勉強もしないで怠けた生活をすることなど、子ども側の悪い行為を報道することは皆無です。
それでは公平で平等な報道とはいえません

もっと、子育ての苦悩の真実の姿を浮き彫りにしなくてはなりません。
子育ての悩みは多種多様であり、親は学校で子育ての教育を受けてきたわけではないので、見様見真似、手探り状態で試行錯誤してやっているのです。

事実の一部だけを切り取って報道し、世間を煽る報道を改める必要があります

【子育てには決まった型がない】

子育てには「これしかない」という絶対的なマニュアルや方法はありません。

「厳しくしつける」という親や、「自分で学んでいってくれと思うのが躾」と考える親もいます。

子育てには、親の性格・価値観が大きく影響します
人間とは不思議な生き物で、まったく同じ人間はこの世には一人もいません。
同じ価値観や考えを一部持つことはありますが、なにからなにまでクローン人間のようにすべての価値観や考え方などの性格が同じ人間は存在しません。

また、その親の育った環境や時代も影響しています。
ですが、人として「やっていいこと」と、人として「やってはいけないこと」は、太古の昔から普遍的なものなのではないでしょうか。

時代環境は変化しますが、人類普遍の事柄は変化しないのです。
子育てで大切なことは、人類普遍のことを躾の中心にすることです。

それ以外は時代の流行であったり、時代と共に変化していくものなので「その時代にはそうだった」「その頃はそうだった」ということでしかありません。

【しつけってなんだ?】

「子育て」って、いったいなんでしょうか?
なぜ人間は子育てをするのでしょうか?

動物のように食事と寝床を与え、天敵から身を守るだけでないのはなぜでしょうか?

人間はひとりでは生きていけません。
他人の存在無くして生きることは不可能です。

他の誰かのためになにか(仕事など)をすることで、支え合って生活することができるのが人間社会です。
その人間社会で生きていくためには、「社会の中で守らなければならないルール(規範)」を身につけなければなりません。
それを身につけた上で行動できるようにしていくことが「しつけ」なのです。

「しつけ」の語源は、着物を縫うときに最初におおまかに縫っておく“しつけ糸”からきています。
最初はしつけ糸で仮に縫っておいて、本縫いをするときには徐々に外していきます。
本縫いが本当の規範だとしたら、その前に「こうしなければいけないんだよ」と子どもに分からせてあげて、徐々に外していって、子どもが自分で覚るようにしていくことが本来のしつけという意味なのです。
本縫いは正しいことを正確に身につけることです。

人間社会のルールとはなんでしょうか?

「嘘をつかない」
「約束を破らない」
「やるべきことをさぼらない、怠けない」
「他人を傷つけない(心身ともに)」
「ズルや卑怯なことはしない」
「他人のものを盗まない(奪わない)」
「目上の人を敬う」
「年下の人の面倒をみる」
「他人がされていやなことは、自分もしない」
などでしょう。

“しつけ”は親が子どもへしてあげる愛情の一つなのです。
子どもが社会に出たときに「困らないように」「他人に迷惑をかけないように」「他人から低い評価を受けないように」「世間から非難されないように」「できれば成功・出世できるように」「社会や他人から認められ評価されるように」と、そういった気持ちで親は子どもを躾けるのです。

【子育てのスタイル】

アメリカの発達心理学の研究によると、子育てについて親は4つのタイプに分類できると言います。

〈子育ての4つのタイプ〉

1.権威タイプ(リーダーシップのあるタイプ)

リーダーシップがあり、親子の関係に温かみがあり、子どもへの要求もしっかり出せる親。

2.許容タイプ

 温かみはあるけれど、子どもにあまり要求をださず、為すがままにさせている親。

3.独裁タイプ

 子供への要求を強く出すが、温かみが欠けている親。

4.関係欠如タイプ

 要求も出さず、温かみもない、子どもを放置するような親。

これらの親に育てられた子供が思春期にどうなるのかを追跡調査した結果、次のような傾向が見られました。

「権威タイプの親に育てられた子どもの傾向性」
 子どもは自信があって、感情のコントロールも上手になる。
 対人関係のスキルに優れている。

「許容タイプの親に育てられた子どもの傾向性」
 反抗的・挑戦的になりやすい。
 継続性に欠ける。(つまり、忍耐力がない)

「独裁タイプの親に育てられた子どもの傾向性」
 不安を感じやすい。
 他人とのコミュニケーションに自信が持てない。(自分に自信がない)

「関係欠如タイプの親に育てられた子どもの傾向性」
 感情のコントロールが出来ない。
 対人関係に混乱をきたす。

〈分類の注意点〉

完全に4つのタイプに当てはなることは少なく、2つのタイプにまたがる、あるいは一部他のタイプと重なるということが多いと思われます。

一番強く当てはまるタイプに注目し、合わせてかぶっているタイプも考慮すると良いと思います。

虐待にあたる子育てを考えると、関係欠如タイプと独裁タイプが危険です。

「温かみ」とは、愛情のことです。
子どもへの愛です。
子育てにおいてなによりも大切なことであり、欠かすことの出来ないものが“我が子への愛”です。
これが子育てのすべてと言っても良いでしょう。
まず、この我が子への愛情があり、それが子どもに正しく伝わることがなにより重要なことなのです。

【子育てのDon’tスキルとDoスキル】

子育てに悩む人向けにこんなスキルがあります。
(基本的に小学生以下の子どもを中心として考えてください)
この3つのスキルを毎日少しの時間でもいいので行います。

Don‘tスキル

Don‘tスキルは、やってはいけないことで、「質問」「命令」「批判」「皮肉」などです。

〈Doスキル〉

Doスキルは、やるべき行動で、「ほめる」「繰り返す」「まねる」「説明する」などです。

子どもの行動を褒める、子どもがした行為を真似てみる、子どものしたことを説明するなど肯定な態度を親が示すことで子供は「親に受け入れられた」「親に認められた」と思い、素直になっていきます。
(このときDon‘tスキルは決して行ってはいけません)

〈無視のスキル〉

子どもが悪さや注意しなければならない行動(行為や発言など)をしたときに、注意したり叱ったりするのではなく、なにも言わずに“無視するテクニック”のことです。

この3つのスキルは、親側のトレーニングなのです。
注意したくてたまらない、叱りたくてたまらない気持ちを少しの時間でも押さえることで親の心境に変化が起きてくるのです。
これらの3つのスキルを継続的に実践することで、親の気持ちが変化していきます。
すると、親の変わった様子を見た子どもが変っていきます。

このDon‘tスキルとDoスキルの実践を子供と遊ぶ時間の中で(1日5分でもいい)やっていくと子どもが変化していきます。
反抗的な態度や怠け心がなくなり、素直になり、進んで勉強や手伝いをするようになっていきます。

この3つのスキルを最低3ヶ月以上実践したら、今度はしつけの実践をします。

このときの効果的な指示(命令)には8つのポイントがあります。

1.間接的よりも直接的に指示する。
 (「~してくれない?」ではなく「してください」と言う)

2.指示は肯定的にする。
 (「~はダメ」ではなく「~してください」にする)

3.指示は1度に1つだけにする。
(あれもこれも指示しない)

4.具体的に指示する。
 (例えば「気をつけて」ではなく「ゆっくり歩いて」など)

5.子供の年齢に合わせる。
 (子どもの理解度に合わせる)

6.礼儀正しい言い方でする。
 (高圧的な口調ではなく礼儀を以って言う)

7.理由は指示の直前か直後に言う。
 (理由がわからないと子供は納得しない)

8.必要なときだけ言う。
 (ぐちぐち後になって繰り返し言うことは避ける)

*なにより一番重要なことは「子どもに感謝の言葉」を伝えることです。

子どもはキツイ言い方で言われると反発するものです。
ですが「優しい言い方」で言われたり、親が「お礼」を言ったりすると、子どもは「もっとやりたい」という気持ちになるのです。
なぜなら、子どもは親に「愛されている」「認められている」と思い、心が満たされるからです。

これらのことを完璧にこなす必要はありません。
できるだけ多くの項目を実践できるようにしてみるだけでも、効果はあります。
ぜひ、実践してみてください。

【完璧な子育て、満点の子育てとは?】

結論を先に言うと、「完璧な子育て、100点満点の子育てなどない」と言えます。

一生懸命に子育てをしてきたけど、失敗したのではないかと考えている親御さんが、もしいたならこの言葉を贈ります。

「子育てに手遅れはない」

教育評論家の尾木さんの言葉です。

中学生でも、高校生でも、大人になっても、親にとって「我が子はいつになっても子ども」です。
教え導くことをやめる必要はありません。
(もちろん子供の年齢に合わせた親子関係は必要)

「わたしの子育ては失敗だ」と嘆く必要はないのです。
いまからでも、教育をすればいいのです。
子どもに教えればいいのです。

【子育てで苦悩する親たちへのメッセージ】

子どもは不完全な存在ですが、親も不完全な存在なのです。
「うまく子育てができない」「子どもを強く叱ってしまう」「子どもを褒められない」「子どもに手をあげてしまう」など、悩んだりストレスを抱えたりしてしまうことでしょう。
そんなときに夫(または妻)や親などの周囲の人間の支え(支援)を受けられず孤立した状態で子育てをしていると、子育てが地獄のように感じてしまいます。

もっと肩の力を抜きましょう。
完璧を目指さなくていいんです。
どの親も手探り状態で子育てをしているのです。
欠点のない人間は存在しません。
子育てに情熱を持ち過ぎると、子どもも親も息苦しく(生き苦しく)なります。

子どもの欠点ばかり気になってしまうのは、あなた(親)が子どもを正しく教育したいと願っているからです。
そんな自分を責め過ぎないでください。
でも、子どもの欠点ばかり見ないことも大切です。
親とは違う個性を認め、行為を憎み、我が子の存在自体を愛する
それが大切ではないかと、アチキは思うでありんす。

【ご意見番が子育てをする親たちにエールを送る!】

「子育てで一番大切なのは我が子へ愛情。その愛情とは無条件の愛であり、見返りを求めない愛であるべき!」

「完璧な子育てなんてない! 親としての未熟さを責め過ぎず、不完全な子どもを責め過ぎず、我が子への愛情をもって躾をすることが大切」

お読みいただき、うれしうござんしす!


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