『フジテレビ崩壊の序曲が鳴り響く【中編】 ~フジテレビの病理を解析する!~』

まずは『【前編】崩れ行くテレビ業界の利益王フジテレビ!をお読みください。

フジテレビの病理を解析する!

《早期退職者募集に応募が殺到?》

「今回の早期退職は人数制限がないため、対象者の8割が説明会に参加したようです。(全体で400人強はいる)」

「早期退職制度でやめる50代は、もう逃げ切ったようなものです。むしろ、若手社員が続々辞めていることが大問題です。フジテレビはいま非常事態の渦中に追い込まれているんです」

早期退職者募集(説明会)に対象者の8割が参加するということは、社員が自社(フジテレビ)に「愛想をつかしている」、または「フジテレビが沈没仕掛けていることを察知している」、ということでしょう。
平易な表現でいうならば、「もうフジテレビでは働きたくない」とベテラン社員が思っているということです。
これは株式会社にとって“非常事態”と言えるでしょう。

《中堅幹部が退社している?》

「フジテレビの場合、若年層が退社していくのではなく、キャリアを積んだ中堅幹部が次々を退社している」

まず、言っておかねばならないのは入社間もない若手社員が退職していくことと、中堅社員が次々と退職していくことはまるで問題の質が違うということである。
若年層は未来があり、可能性がある。
しかし、ある程度の年齢となってしまうと、日本社会では転職が難しくなる。
だから、中堅社員(中堅幹部)がそう簡単に退職(転職)することはない。
しかも、中堅幹部社員は、その会社にとっては知識、経験において抜き差しならぬ人材であることは中小企業から大企業まで貫く法則のようなものである。
私生活では家庭を持ち経済力(収入)を必要としている人たちだ。
そうした年代層が退社していくという現象は、たとえて言えば沈みゆく船から脱出をはかっている姿を思い浮かべる。

企業の核とは、ある意味で知識と経験豊富な中堅社員であるともいえる。
その中堅社員(中堅幹部)が脱出しているフジテレビは末期症状と言える。

《純利益75.5%減が意味することとは?》

売上5199億円、前年比17.7%減。
営業利益162億円、同38.2%減。
純利益は101億円、同75.5%の大幅減益
(2021年3月期連結決算)

粗利から経費を差し引いた純利益が75.5%も減益となったら企業としては赤信号です。

企業は借金では潰れません。
資金調達できれば、たとえ赤字であっても企業は存続することが可能です。
その面ではまだ余力があるかもしれません。
しかし、もっと深刻な企業体を蝕む問題は“社員の流出(退職)”なのです。
特に中核となる中堅社員が抜けていくということは、その組織体の知識と経験が減ることと同義となります。
その現象は必ず組織体を弱体化させます
時代の荒波に泳ぎ渡っていかなければならない企業が生き残るために必須なのが「中核となる中堅社員」なのです。
いくら優秀な経営者がいても、いくら将来有望な若手がいても、中堅に優れた人材がいなければ、その組織体は弱体化した組織でしかありません。

中堅社員が退職していき、若手もやる気を失い、高齢社員は沈みゆく船から早期退職者募集によって我先にと逃げようとしている。
それが決算数字として如実に表れたのが「純利益75.5%減」なのです。
(利益減には他の要素もあると思われる)

「純利益75.5%減」

これを個人の収入で考えてみてください。
手取りが75.5%も減ったら、生活できますか?
それが数ヶ月続いたら死活問題となります。
それがフジテレビに起きているということです。

《制作費が1/4に削減》

「番組の制作費はここ10年で約半分に削られている」

別の証言では「深夜番組1時間であれば『150万~200万円で作れ』と指示が平気で来ます。10年前なら30分の番組で300万~400万円をかけていましたから、いまや制作費は4分の1まで削られた」とあります。

結局、制作費の増減はその会社が発展しているのか衰退しているのかの一つの指針です。
それを社員が感じ取り、「やる気がでる」または「やる気がでない」のどちらかにつながるのです。

社員のモチベーションが下がれば、当然制作する番組の質の低下を招きます。
これはどんな組織体でも共通する法則です。

それが小さなミスで済めば組織体の存続には影響しませんが、大きなミス(汚職、致命的な欠陥の発生)につながれば組織体の存続に大きく影響してきます。

みなさんお気づきですか?
フジテレビにはその現象がすでに現れています。
このブログをずっとお読みの方であれば、気づいたかもしれません。
(後編で語ります)

簡単に言うと、制作費の削減は番組の質の低下と社員のモチベーション低下となります。
それをカバーするだけの“なにか”が無い場合、組織体は衰退の道へ転げ落ちるしかないのです。

《給料の大幅減》

プロデューサークラスであれば、「40代で年収2000万円」
これは大臣にも匹敵する収入ではないでしょうか?
それが大幅に減少している。
しかし、それでもフジテレビ社員が高給取りであることには変わりありません。

「30代半ばでも年収が1000万円に届かず=平均700万円台が相場」
「ボーナス=100万円(30代後半後)」
十分ではないでしょうか?
これで不満を言うところにフジテレビ社員の問題点が潜んでします。

確かに以前の給料から大幅に減収となれば、誰だって不満は持ちます。
それが人間心理と言えるでしょう。
フジテレビ社員のモチベーションが下がった原因は給料の削減にあることは間違いないでしょう。
しかし・・・。

2021年の日本全体の平均年収は以下の通り。

20代の平均年収 = 341万円
30代の平均年収 = 437万円
40代の平均年収 = 502万円
50代の平均年収 = 613万円
すべての年代で共通して割合が最も高いのは「300万~400万円未満」となっています。

結局、経営者が社員の働きに何をもって答えるのか?
社員が何をもって自社に忠誠を誓うのか?
という問題の一番大きなモチベーションが「給料」であることは間違いありません。

しかし、この点において経営者側の視点と社員の視点では相違があるのが世の常なのです。
経営者は利益を生み出すためには経費である社員の給料はできるだけ押さえたいと思い、一方社員はできるだけ多くの給料をもらいたいと思う。
その差が少ない企業が発展していく企業なのです。

ここで少しだけ言うと、フジテレビ社員の年収は世間一般の人の数倍あるのです。
これに文句を言うこと自体に問題が潜んでいます。
(この件については後編で別な話をします)

《フジテレビ社員のやる気を削ぐ要因とは?》

フジテレビは、本業のテレビ事業だけではなく、観光事業や不動産事業にも進出しています。
これは人にもよりますが、テレビ業界で腕を振るいたいと思って入社した社員、良い番組を作ることに熱意を持った社員のやる気に水を差すことになりかねません。

経営論で言えば、事業が傾いたときには多角化を止め、本業回帰が正しい経営のかじ取りです。
それをフジテレビは良いときの事業形態を方向転換できずにいるのです。

経営者にとっては会社が儲かればそれで資本家に言い訳がつくと考えますが、社員からすれば「俺たちは良いコンテンツを作りたくてテレビ業界に入ったんだ」となりますから、そうした本業からそれた事業依存は、本業に熱意を持った社員のやる気を削ぐことに繋がるのです。
この変のかじ取りをフジテレビは間違っているのです。
その間違いはフジテレビが傾いている根本の問題から発生しているものです。

《フジテレビを侵食する元凶とは?》

ずばりフジテレビの病理の最大の原因は、日枝久相談役(84)と宮内正喜氏会長(77)による『日枝・宮内体制』にあると言える。
これを別な表現で言えば、「独裁体制」と言える。

それを裏付ける社員の声があります。

「自分たちの指示通りに動き、問題を起こさない社員を登用し出世させていく。ゴマをする社員だけが出世していく」

これはトップダウン型の経営のように見えて“独裁体制”と呼ぶべきことです。
真のトップダウンとは経済の動向、顧客の趣向、社員の声に耳を傾けながら孤独な決断をするものです。
「孤独な決断」には、“責任を取る”という厳粛な姿勢が必ず横たわっています。
社員では解決つかない難題を孤独にて決断するからリーダーなのであって、だからこそ高給を得ているのです。
それがフジテレビの経営陣は現場の声を封殺し、責任を回避しています。

独裁とは、「自分しか信じない」「自分に味方する者しか信じない」「苦言は受け付けない」「他人(社員)を犠牲にしても痛みを感じない」という特徴を持つものです。

「冒険しようとする企画はまず通らない。その代わり他局で当たっている番組の二番煎じ、三番煎じの番組ばかりやりたがる」

これは「チャレンジ精神よりも自己保身を最優先する」ことなので、ネット配信会社が勢いを伸ばす社会の中でテレビ局が巻き返せるはずがありません。
斬新なアイデア、どこにもない企画、あっと驚く番組、そうした視聴者を惹きつける魅力的な番組なくてはネット配信事業に敗北することは必然でしょう。

要するに、「安全策」=「衰退への道」であることが独裁型経営陣には理解できないのです。
なぜならば、自己保身に走っているからです。

チャレンジとは責任を負う覚悟の上に成り立つのです。
逆に自己保身とは責任回避の現れでもあるのです。

強力なライバルが現れた市場で、チャレンジ精神を失った組織体は破れる宿命から逃れられないのです。

民間企業に独裁体制があり得るか?
と思う方もいるでしょう。
しかし、現実の社会で企業に勤めている方の中にはそうした現実を突きつけられている方が非常に多いと思われます。

欧米の会社は基本的に「資本家のためにある」ですが、日本の企業は「経営者と社員の共同体」として存在してきました。
日本人は欧米の人たちに比べて「自分の会社」という意識が強いのです。
だから、日本人はドライなやり方に慣れていないというか、我慢ならないときがあるのです。
また、それが裏切られる瞬間があります。
それが「人事」です。

みんなで作り上げた会社が独裁者(経営者)の個人的な都合によって振り回される。
そこに嫌気がさすのです。

経営権がどこに発露するのかと言えば、結局、「人事」「支出(収益の使い方)」に尽きます。

フジテレビの病理は見事に「人事」と「支出」に現れています。

正常な企業では実績のある者が出世していきます。
それが番組実績もなく、他の社員に実績があると認められていない矢延氏が制作のトップの座に座る。
それがどれだけ現場の社員のやる気(モチベーション)を下げるのかが分からない。
そこに独裁者気質が現れています。
つまり、「俺がやりたいようにする」「俺の意向を汲む人材を優遇(贔屓)する」という日枝氏と宮内氏の思い上がりなのです。

どんな組織でも「人事」を間違えると必ず傾きます。
人事に公平さ、贔屓、不平等があると社員は敏感に感じ取ります。
それは社員のやる気に大きく影響します。
その波は業務上のミスに始まり、事業成果の低下になり、末期症状として退職者が続出するという道をたどります。

フジテレビの病理の根源は、「独裁体制による弊害」なのです。

『【後編】フジテレビ崩壊の原因は社員にもあり!』につづく。

最後までお読みくださり、ありがとうござりんす。


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