『香川県の子供のゲーム利用時間を制限する「インターネット・ゲーム依存症対策条例」訴訟にもの申す!【前編】 ~憲法で保障された幸福追求権と法律の関係~』

以前にも記事にしましたが、香川県のゲーム依存症対策条例に関する法廷が開かれたようなので、世直しご意見番として見解を述べたいと思うでござりんす!

香川県「インターネット・ゲーム依存症対策条例」の裁判闘争はじまる!

《インターネット・ゲーム依存症対策条例の口頭弁論》

香川県の子供のゲーム利用時間を制限する「インターネット・ゲーム依存症対策条例(4月施行)」は、憲法第13条が保障する「幸福追求権」などを侵害している憲法違反であるとして、高松市の高校生渉さん(18)と母親が県に160万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が12月22日に開かれた。
(高松地方裁判所・天野智子裁判長)
(原告・渉さん(名字は非公表)及び母親/原告側代理人・作花知志弁護士)

《訴訟の内容(原告の訴え)とは?》

香川県の条例に対する原告の訴えは?

原告側の主張の根拠は、政府が「ゲーム依存症の発症を防ぐための時間制限に係る有効性および科学的根拠は承知していない」という見解を示していること。
この政府見解によって、「条例の目的に科学的正当性は認められない」と主張している。
仮に正当性が認められたとしても、親や子供には何時間ゲームをするかを決める自由があり、条例は基本的人権を必要以上に制限しているため「違憲」だとしている。

訴訟の中で、原告側は、条例が憲法などに反することが明らかであるのに香川県議会が改正や廃止などを怠っている、いわゆる「立法不作為」が国家賠償法上、違法だと主張している。

注目すべきは、原告側に対して天野智子裁判長が投げかけた言葉です。

「議会が条例を制定したこと自体に問題があるとは問わないのか?」

これは重要な意味がありますので、このブログをお読みの方は頭の隅に入れっぱなしでお読みください。

《被告(香川県)の主張(反論)は?》

香川県は請求棄却を求めた
香川県は答弁書で、条例によって受けた不利益の詳細などを明らかにするよう原告側に求めた。

香川県は、この条例が規定する責務は「努力目標」や「目安」に過ぎないことは明らかであるのに、「原告側が何らかの被害を被ったかのような主張をしている」と反論している。

《条例の内容とは》

条例の問題点はゲーム及びスマートフォンの利用を具体的に制限している点にある。

条例では、18歳未満のゲーム利用は1日60分(学校が休日の場合は90分)までと利用を制限している。
また、スマートフォンの利用については、中学生以下は午後9時までそれ以外は午後10時までと利用に関する時間制限を定めている。

上記の内容を目安にして、家庭でルールを作って子供に順守させる努力義務を保護者に課している。
罰則規定はない

この条例は、ゲーム依存症やスマートフォン依存症から子供を守るための自治体や保護者などの「責務」を定めたもの

(情報は、『産経新聞』、『JIJI.COM』など)

香川県「ネット・ゲーム依存症対策条例」(前文)

条例の前文の一部を記載する。

「インターネットやコンピューターゲームの過剰な利用は、子供の学力や体力の低下のみならずひきこもりや睡眠障害、視力障害などの身体的な問題まで引き起こすことが問題とされており、世界保健機関において『ゲーム障害』が正式に疾病と認定されたように、今や国内外で大きな社会問題となっている。とりわけ、射幸性が高いオンラインゲームには終わりがなく、大人よりも理性をつかさどる脳の働きが弱い子どもが依存症になると、大人の薬物依存と同様に抜け出すことが困難になっていることが指摘されている」

香川県民の賛成と反対は?

この条例の施行にあたっては検討会が開かれていた。

公表されている情報によれば、条例案に賛成したのは、2,268人(香川県民)、県内の事業者1団体。
反対したのは333人(香川県民)と県内の事業者1団体、県外の事業者67団体。

検討会では、賛成派の具体的な意見として以下のような発言があった。

「依存症を減らせるきっかけになればいい」
「時間を区切ることが節度ある生活習慣につながる」
「60分の制限時間は妥当」
など。

反対派の具体的な意見は?

「長時間没頭したら危ないのはゲーム以外でも同じ」
「各家庭のしつけやルールの問題で、行政が介入すべきではない」
「制限時間の根拠が明らかでない」
など。

県議会事務局はこれに対し、以下ように主張した。

「時間制限は子どもの睡眠時間を確保し、規則正しい生活習慣を身につけさせるために必要」
「制限時間は久里浜医療センターの調査に基づくもの」

寄せられたコメントへの反論!

YAHOO!ニュースでは多くのコメントが寄せられていた。
その中で明らかに「間違っている」と思われる意見にご意見番が反論する。

以下YAHOO!ニュースコメント欄より引用

「憲法違反?ただの県の条例ですよね?
しかも、訴えて『損害賠償』って?
この条例によって、この高校生は『160万円もの損害』を受けたのですか?
心情的に被害を受けたとでも言いたいのかな?
例えば、ずっとゲームをしている子供に「もう止めなさい!」と叱る両親が居たら…違法ですか?」

『日本国憲法』
第3章国民の権利

第11条
「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」(原文のまま)

第12条
「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」(原文のまま)

第13条
「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする

《憲法の意味》

コメントへの反論だが、条例に対する評価(反論)の重要論点となる。

〈憲法の存在意義〉

憲法は民主主義国家において、最高権を持つものである。
憲法の下に位置する法律、条例などは憲法の趣旨に反してはいけない

憲法の趣旨に反する内容の法律や条例は、「存在することができない」あるいは「許されない」というのが憲法と法律(条例を含む)の関係である。
憲法の趣旨に反する法律や条例の立法は憲法違反となる。

このことを天野智子裁判長は指摘したと思われる。
つまり、「憲法に反する内容の条例を議会で制定すること自体を違法として訴える」ということ。
すでに施行されてしまった条例が憲法違反という主張は重要だが、そもそも憲法に反する内容の条例を議会で立法することの議会(議員)の責任を追求してはどうか、と天野裁判長は指摘したものと思われる。

民主主義国家の大前提が憲法順守である。
法律や条例は、憲法の趣旨に反してはいけないのだ。

〈憲法の存在理由〉

さらに、重要なことは「誰が守るのか?」という視点である。

法律や条例を守るのは全国民であることは承知のはず。
権力者である議員や公務員を含む全国民がその国で制定された法律を守ることが求められる。
(県や市町村の条例の場合は、該当する地域の住民に対して)

だが、憲法では比準が違う。
憲法の大きな比準は、一般国民に対してではなく、権力者(為政者)に対して法の順守を求めるものなのだ。

つまり、「憲法は権力者から国民を守るためのもの」ということ。
憲法を守るべき本対象者は、議員、公務員たちなどである。

《自由と幸福追求権》

コメントを寄せた人物の発言は間違いだらけである。
「自由」はお金では買えない、貴重なもの。
人間が個人の幸福を求めること(幸福追求権)は、法治国家においては侵すことのできない最大の権利である。

これをもし、侵すならそれは専制政治であり、社会主義、独裁主義の国家となる。
人は誰しも、その人固有の個性により、その人固有の生活環境により、その人固有の幸福を求めることが認められなければならない。
(法律に反する犯罪をしない限り)
それが幸福追求権である。
だが、人権の基本中の基本、人権の本丸である「幸福追求権」は「自由」なくしてはあり得ない。

もし、あなたは親が農家だからあなたも農家になりなさいと法律で定められていたらどう思いますか?
もし、あなたが生まれた地域から移転してはいけないという法律があったらどう思いますか?

現代には「職業選択の自由」と「居住地移転の自由」が許されています。
それに基づいて各人が幸せに暮らすために職業選択及び居住地移転を自らの意志で決めることができます。

自由が与えられていなければ、幸福追求権は無いも等しいのです。

〈コメントの間違いとは〉

このコメントの間違いとは?

「憲法の趣旨に反する法律、条例は存在することができない」ことを理解していないこと。
「自由を奪われた精神的苦痛に対する人間が持つ基本的人権を奪われることの損害」がまったくわかっていないこと。
「ゲームを止めるように躾ける親と法律(条例)との関係」をまったく理解していないこと。
「心の幸福という価値観が欠落していること」

発言することは自由ですが、自由には責任が伴います。
無責任、無知な発言は誹謗中傷コメントと同じです。
誹謗中傷の撲滅を求めるならば、こうした無責任、無知な発言も社会から糾弾される必要があります。

アメリカ大統領選挙と本質において同じ問題である!

アチキがこのニュースを知って思ったことがありんす。
実はこの香川県ゲーム依存症対策条例の問題と米大統領選挙の騒動とは同質のものが存在しているのです。

それはなにか?

長々と説明できないので端的に述べます。

「憲法を守ろうとする人」と「憲法に反する法律(条例含む)を制定する人」との対立です。

トランプ氏は合衆国憲法に極めて忠実に行動しています。
一方、バイデン氏の選挙不正は、州が合衆国憲法に反する法律やルールを独自(勝手に)作って票の集計などを行っています。
(法律違反も多くある)

香川県議会が施行した「インターネット・ゲーム依存症対策条例」は、明らかに憲法違反です。(ご意見番の判定では)

原告の渉さんの主張は、「憲法を守れ!」です。
(ただし、香川県側は「憲法違反ではない」と主張しています。)
ですが、個人の生活に踏み込んでいること、選択権を制限していることは明らかに自由の侵害です。
それは原告の渉さん及び弁護団が主張しているように、幸福追求権の侵害に該当します。
それがご意見番による裁定です。

『香川県の子供のゲーム利用時間を制限する「インターネット・ゲーム依存症対策条例」訴訟にもの申す!【後編】』につづく。

最後までお読みいただき、ありがとうござんした!


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