『ツイートのスクショは著作権侵害の裁判にもの申す!【前編】 ~スクショツイートが著作権侵害であるかを検証する!~』

はじめに

Twitterを使用している人にとっては大きな関心を持つ裁判が昨年ありました。
その裁判とそれに対する弁護士の見解などを引用しながら、個人的な感想及び改革の意見を提示したいと思います。
Twitter利用者必読の記事です!

〈お断り〉

記事は【前編】と【後編】に分かれており、【前編】は裁判の内容を紹介しているため引用が多くなります。【後編】ではご意見番の独自見解がほとんどを占めています。
記事全体から見ると【前編】は【後編】のための広い意味での「引用」または「前置き」となります。
その点、ご理解ください。

情報源は、以下の通り。

『弁護士ドットコムニュース』
「スクショ画像のツイートは『著作権侵害』東京地裁判決はユーザーにどんな影響がある?」

他人のツイートのスクショを投稿することは著作権侵害に当たる?

《発信者情報開示請求を行った裁判》

Twitterを利用している人にとって、他人のツイートをスクショして投稿することは日常的に行われていることであると思います。

2021年12月、この問題に関する裁判がありました。
原告のX氏がNTTドコモを相手取り、「Twitter上で著作権侵害があった」としてユーザー2人(A氏とB氏)について発信者情報の開示請求を行った裁判(東京地裁、中島基至裁判長)です。
ですので、著作権侵害を結審する裁判(今回の地裁)ではありませんし、NTTドコモが控訴するので、裁判の最終的な決着がつくのは先のことになります。
その点、誤解されている方がTwitter利用者にいるようなので、ご注意ください。

《裁判の発端(原告側の主張)》

裁判に至った発端は、「A氏+B氏」とX氏との間での論争です。
2021年3月ごろ、A氏とB氏はX氏のツイートのスクリーンショット(以下スクショと表現)を添付したツイートを行っていました。
X氏は、これに対して以下のような主張を根拠に裁判を起こしたのです。

抜粋引用

「自分が有する思想と感想を想像的に表現したものであり、文芸の範囲に属する言語の著作物に当たる」

(4つのツイートについて)

また、X氏は下記に記すA氏とB氏の主張に対して以下の反論をしています。

抜粋引用

「画像自体から明らかであるのは、原告のツイッターアカウントにすぎない。そして、原告各投稿は、いずれも既に削除されており、URLが明示されていない限り、決して原典には到達できないことからすれば、原告のツイッターアカウントの表示だけでは出所が明示されたことにはならない」

《被告側の反論》

これに対してA氏とB氏(被告側)は以下のような反論をしています。

抜粋引用

「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(著作権法2条1項1号)に該当するかどうかは疑義がある

また、被告側の反論には以下のものがあります。

抜粋引用

「X氏の意見に対し批評を加えるためにツイートを引用する形で行っていて、引用元は明らかであるので、引用の要件を満たしている」

《裁判の判決は?》

裁判(地裁)の判決では、X氏のツイートについて、いずれも「原告の思想又は感情を創作的に表現したもの」と認め著作権法10条1号が定める「小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物」であると結論づけました。

〈裁判所の見解〉

X氏がC氏に宛てたツイートの事例。

抜粋引用

「@C アナタって僕にもう起訴を起こされてアウトなのに全く危機感無くて心の底からバカだと思いますけど、全く心配はしません。アナタの自業自得ですから。」

裁判所は上記のツイートに対して以下の見解を示しています。

抜粋引用

「140文字という文字数制限の中、原告に訴訟を提起されたにもかかわらず危機感がないと思われる特定のユーザーの状況等につき、『アナタ』、『アウト』、『バカ』、『自業自得』という簡潔な表現をリズム良く使用して嘲笑するものであり、その構成には作者である原告の工夫が見られ、また、表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる」

〈裁判所の判断〉

裁判所は最終的に以下の判断をくだしました。

抜粋引用

ツイッターの規約は、ツイッター上のコンテンツの複製、修正、これに基づく二次的著作物の作成、配信等をする場合には、ツイッターが提供するインターフェース及び手順を使用しなければならない旨規定し、ツイッターは、他人のコンテンツを引用する手順として、引用ツイートをいう方法を設けていることが認められる」

「そうすると、本件各投稿は、上記規約の規定にかかわらず、上記手順を使用することなく、スクリーンショットの方法で原告各投稿を複製した上ツイッターに掲載していることが認められる。そのため、本件各投稿は、上記規約に違反するものと認めるのが相当であり、本件各投稿において原告各投稿を引用して利用することが、公正な慣行に合致するものと認めることができない

上記の理由の他に、A氏とB氏のツイートとX氏のツイートのスクショとを比べて以下の理由によりA氏とB氏のツイートが引用要件を満たしていると認めませんでした。

抜粋引用

「スクリーンショット画像が量的にも質的にも、明らかに主たる部分を構成するといえるから、これを引用することが、引用の目的上正当な範囲内であると認めることもできない」

〈裁判の判決〉

上記の理由によって、裁判所はNTTドコモに対して、発信者情報を開示するよう命じました

裁判における弁護士の見解とは?

《重要論点とは?》

〈弁護士の見解〉

この裁判に対して『弁護士ドットコムニュース』の中で澤田弁護士の見解を掲載しています。
澤田弁護士の見解をいくつか引用します。

抜粋引用1

「この裁判所の判断の中で最も重要なのは、他者の投稿のスクリーンショットを掲載して当該投稿に言及するツイート(スクショツイート)がツイッターの規約に違反することのみを理由として、当該ツイートは『公正な慣行』に合致せず、著作権法上の引用は成立しないと判断した点です」

抜粋引用2

「この判断を字面どおり捉えると、スクショツイートについては、他の要件を満たしていても常に著作権法上の引用が成立する余地はなく、他に適法となる理由がない限り、著作権侵害になってしまいます」

抜粋引用3

「そもそも、『公正な慣行』要件とは、とても抽象的ですが、『世の中で著作物の引用行為として実態的に行われており、かつ、社会感覚として妥当なケースと認められるもの』がこれに合致すると解されます(加戸守行著『著作権法逐条抗議 七訂新版』/著作権情報センター/2021年/302頁)。」

〈弁護士ドットコムニュースの見解〉

上記の澤田弁護士の見解を基に『弁護士ドットコムニュース』では、以下の見解を述べています。

抜粋引用1

「このような理解からすると、利用実態と社会通念が重要であって、(利用規約に従った行為が公正な慣行に合致するという判断をするならまだしも)利用規約に違反したからといって直ちに公正な慣行に合致しないとはいうことはできないと考えます」

抜粋引用2

「少なくともツイッター上で、他者の投稿に言及するツイートが実際にどのようになされているのか実態等を踏まえなければ、公正な慣行に合致するかどうかの判断を適切におこなうことができないでしょう」

抜粋引用3(問題提起)

「今回の裁判所の判断によれば、こういった場合にツイッター上で他者の投稿を引きながら言及する方法がなくなってしまうことにもなりかねません。このような帰結は、表現の自由という憲法上の価値にも関わる著作権法上の引用規定の趣旨にもそぐわないのではないかと疑問があります」

著作権法上とは?

《スクショツイートに関する著作権法》

ツイッターを利用する上で、スクショツイートに関する主な法律は以下の通りですので、Twitterを利用する方はよく頭に入れておいてください。

『著作権法第2条』

著作権法第2条1項
1.この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
二 著作者 著作物を創作する者という。
三 実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗読し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。

『著作権法第10条』

著作権法第10条第1項
1.この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物

『著作権法第32条』

著作権法第32条第1項
1.公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない。

《ポイント》

Twitterの場合、著作権侵害に該当するためのポイントは、ツイートが「文芸、学術、論文などの著作物と同等の価値を有するものであること」である必要があります。

もう一つのポイントは、引用が公正な慣行に合致するものであり、批評などを加えるための使用であり、なおかつ、公表された著作物であれば引用が可能となる」ということです。
これが、著作権法を素直に理解したときの観点です。

『【後編】スクショツイートは表現の自由と言論の自由を担保するために認めるべき!につづく。

リンク先

『弁護士ドットコムニュース』
「スクショ画像のツイートは『著作権侵害』東京地裁判決はユーザーにどんな影響がある?」

最後までお読みくださり、ありがとうござりんす。


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