今回も「0.1%の奇跡逆転無罪ミステリー」というテレビ番組から怒りの内容を伝える最終回でありんす!
最終回に相応しく最強最悪の冤罪事件を糾弾するでありんすよ~!

まずは、番組を観ていない方のために事件を詳細に伝えます。
(番組をご覧の方は、【後編】の《検証&糾弾編》に飛んで読んでください)

冤罪事件というものは、事件自体は存在するが、犯人を間違えたために無実の人が有罪になるものです。
ですが、今回の冤罪事件は驚くべきことに「事件自体が存在しない」冤罪事件なのです!
恐るべし恐るべし。

【知り合いの選挙応援をしただけなのに逮捕された冤罪事件】

鹿児島県志布志でビジネスホテルを経営する川畑幸夫さん(仮名)と奥さんの順子さん(仮名)に降りかかった冤罪事件は史上最悪の冤罪事件だったのです。

川畑幸夫さんが経験した冤罪事件を一言で言うと、
「知り合いの選挙応援をしただけなのに、逮捕され、トラウマになる行為で恫喝された冤罪事件」なのです。

川畑さんは、そのとき受けた屈辱が忘れられなくて自身が経営するホテルの前に看板を立て続けています。
その看板にはこう書かれています。
「密室の中は可視化が必要」
「取調べをする警察官も!!取調べを受ける私達も!!」
(原文のまま)

川畑さんは、看板を建てた理由をこう述べています。
「嘘の情報で朝から晩まで自白を迫るもんだから、それがきつくて心もズタズタにされて、どうしても忘れないために看板建てたんです」

川畑さんになにがあったんだ~!

《選挙応援》

4年に1度の統一地方選挙。
冤罪事件の起きた鹿児島県は長年自民党王国と呼ばれています。

川畑さんが住む志布志市の選挙区(曾於郡区)では、
定員3名に対して立候補者3名という選挙が続いていました。

ところが2003年の選挙(県議会議員選挙)では、定員3名に対して自民党の現職候補者3名の他に川畑さんが応援した(選挙参謀として)新人の中山信一さんが立候補したのです。
しかも中山さんは無所属で挑み見事当選!!

ポイントはここです。
もし、新人候補者が立候補しなければ、自民党の現職3名の当選が無投票で決まるはずだったのです。

これが冤罪事件の始まりでした。

〈2003年県議会議員選挙結果〉

当選

徳留紀寿(とくどめのりとし) 63歳(男) 現職(自由民主党) 17,196票

森義夫(もりよしお) 69歳(男) 現職(自由民主党)     16,4726票

中山信一(なかやましんいち) 57歳(男) 無所属       13,312票

落選

市ヶ谷誠(いちがたにまこと) 49歳(男) 現職(自由民主党) 11,205票

中山信一さんは、現職の議員相手になんと、2,107票も差をつけて勝利したのです。

《冤罪事件のはじまり》

喜んだのもつかの間、投票日の翌日に川畑さんはなぜか警察に呼び出されたのです。

このとき川畑さんは警察に呼び出されたことを、少年補導のことで何か聞きたいことでもあるのだろう、と思ったそうです。

実は川畑さんは十年以上前から警察の要請で不良少年たちへの声掛けや街の防犯パトロールなどを行っていたからです。

ですが・・・。
なぜか川畑さんは身に覚えのない賄賂を渡した容疑で取り調べを受けることになってしまったのです。

刑事は取り調べ室の机をドスンと強く叩き、ドスのきいた声でこう言いました。
「川畑、お前が賄賂を渡したのは分かってるんだ!」
「正直に吐かないと一生家には帰さんぞ!」

当然川畑さんは、「賄賂なんて知らん」と否定します。
当たり前です。
川畑さんは賄賂なんて渡していないからです。

「嘘をつくな!」
刑事は怒鳴り声をあげます。

強引な取り調べは連日にわたって行われました。

これが史上最悪の冤罪事件の始まりでした。
川畑さんをかわきりに7世帯20人が暮らす小さな村を巻き込み、選挙での買収事件に発展していったのです。

《警察が作り出したでっち上げのストーリーとは》

事件を担当した弁護士である野平康博氏はこう述べています。

「今回の事件の特徴は選挙買収という行為があったかのようにして自白を強要し、警察が作り出した事件です」

〈でっち上げストーリー1〉

川畑さんが知り合いの有権者などにビールを配り買収。

〈でっち上げストーリー2〉

中山候補の部下の女性が地元の人々に焼酎と現金で買収。

〈でっち上げストーリー3〉

中山候補夫妻と部下の女性が共謀して自宅で会合(宴会)を開き現金で買収。

この3つが警察のでっち上げた選挙買収ストーリーです。

通常の選挙では、選挙後に違反がなかったかチェックする選挙捜査班が選挙違反の捜査をします。
ですがこのときは、捜査班(捜査第二課・統一地方選公選法違反取締本部)が選挙途中に立ち上がっていたのです。

この選挙違反の捜査を指揮したのは志布志警察署署長の白井茂雄氏(仮名)です。
白井署長は捜査班に激を飛ばします。
「いいか、どんな小さな違反でも見逃すな!」

現場の指揮を執ったのは、県警本部からやってきた山辺明宏警部(仮名)池田彰利警部補(仮名)でした。
山辺警部は捜査員を叱咤します。
「お前たち、絶対違反を上げるぞ!」
この二人の刑事の取調べはめちゃくちゃで信じられないものだったのです。

《警察の極悪捜査》

警察のでっち上げた前代未聞の捜査はこうです。

〈ビール買収の嘘〉

川畑さんは仕事柄頻繁にホテルを利用する建設会社の社長にビールを贈ったことがありました。
ただ、それは世間一般で行われているお歳暮です。
しかも、それは川畑さんが中山候補の選挙参謀になる前のこと。

何か問題ありますか?

なのに、刑事は「投票を頼んでビールを配っただろう?」
と川畑さんを恫喝します。

川畑さんが「知らん」と否定すると、刑事は「嘘をつくな!」と怒鳴ります。
川畑さんは相手陣営によって罠にはめられたのではないかと思いました。

ところが刑事はこう言いました。
「罠だと~、罠というのは警察が使う言葉だ」
はっ?
言論(言語)統制か?

任意捜査にも関わらず川畑さんは、朝8時から夜10時過ぎまで県警捜査班によって恫喝され続けたのです。

取り調べが始まって3日目に、忌まわしい屈辱的な出来事が起こります。
選挙違反を自白しない川畑さんを追い詰めるために刑事は暴挙に出たのです。
(自白しないのは当たり前、やっていないのだから)

池田警部補は取り調べ室の机をどかし、記録を執っていた警察官から紙とペンを横取りすると何かを書き始めます。
それを川畑さんの足元に並べだします。
床に置かれた3枚の紙にはこう書かれていました。

「(栄三)お父さんはそういう息子に育てた覚えはない」
「(文雄)元警察官の娘をそういう婿にやった覚えはない」
「(沖縄の孫)早くやさしいおじいちゃんになってね」

(注:「栄三」は川畑さんの父親、「文雄」は川畑さんの義父です。)
(注:「沖縄の孫」の部分は本来孫(長女の子ども)の名前が書かれていました)

つまり、父、義父そして孫から川畑さんへのメッセージとして勝手に書き記したのです。

そして刑事はこう言いました。
「お前の態度はな~、親族の気持ちを踏みにじるモノだ~」

そういうと刑事は、川畑さんの足を掴んで強制的にメッセージの紙を踏みつけさせました。
なんと、家族の名前とメッセージを踏みつけさせたのです。
いくら刑事が勝手に書いたメッセージとはいえ、これは屈辱的な出来事です。

「踏み字」をさせながら刑事はこう言います。
「お前は本当に血も涙もないやつだな~」
「親父も孫も踏みつける」

ここではっきりさせますが、このメッセージは池田警部補の捏造です。

事件から17年経ったいまでもそのときの傷は癒えていないため、取材を受けながら川畑さんの目には涙が流れていました。

〈孫たちの告白〉

番組では川畑さんの孫たちが現れて、衝撃の告白をします。

孫の優馬さんの告白
「勝手に警察が名前を使って、それでじいちゃんの足使って勝手に自分の名前踏まれているというのは見てるだけで不愉快」
「警察に不愉快な感じがしました」

孫の真由花さんの告白
「警察ってそういうこともする人たちなのかなって・・・」
(台詞は原文のまま)

孫の真由花さんは“踏み字”が忘れられず作文にしたといいます。
真由花さんは歴史の授業で隠れキリシタンの踏み絵を学んでいたので、今の時代に踏み字という行為があったことにとても驚いたといいます。

川畑さんは刑事による非人道的な取り調べを受けたことの精神的苦痛から体調を崩し、2週間入院することになってしまいました。

焼酎・現金買収の嘘

警察は川畑さんが入院してしまうと、でっち上げストーリーの登場人物を変更したのです。
警察が次にターゲットにしたのは、中山議員の関係者が暮らす懐(ふところ)集落。
懐(ふところ)集落は7世帯20人が暮らす静かな村です。

刑事は村の人に対して中山議員を積極的に応援していた人物を探し始めます。
そこで中山議員の焼酎工場で働く辻元さんの奥さんの存在を知ることになります。

中山議員の家業は、いも焼酎の製造販売業を営んでいたのです。
その工場で働く辻元さんの奥さんにターゲットを絞ったのです。

刑事は辻元さんに対してまたしても嘘のでっち上げストーリーに添った自白を強要します。
「あんたが中山に頼まれて焼酎を配ったという情報が入っとるんだ」

「そんなことやってません」
辻元さんは当然そう答えます。

しかし、刑事の追求はさらに激しさを増します。
「認めれば帰れるんだぞ!」
「認めないと親や兄弟、子どもも逮捕するぞ!」

おいおい!
正気か?

辻元さんの取調べは737時間にも渡りました。
拘留は115日。

辻元さんの精神はボロボロになりました。
「もう死にたい・・・」
と絶望の気持ちを口にします。

池田警部補はそれを待っていたのです。
「そんなに死にたいなら、俺の前で死ね!」
なんてことを・・・。

なかなか口を割らない辻元さん。
(そりゃそうだ。なにも悪いことはしていないのだから!)

そこで警察は、またターゲットを変更します。
それは、賄賂を渡した側ではなく、賄賂をもらった村人を狙うことにしたのです。
(どこまでやるんだ~!)

〈現金買収の嘘〉

「ちょっと雑談でもしようか?」そう言って呼び出したのが、懐集落の住民である山中鶴雄さんでした。

山中さんが連れてこられたのには、根拠も理由もありません。
そう、誰でもよかったのです。

山中さんを取調べしたのは、県警本部の部下である通称クイズ刑事(でか)。
クイズ刑事はこんな質問をします。
「もし、辻元さんが家に来たとしたら、何をしに来たんだと思う?」

山中さんは少し考えてこう答えます。
「もし、来たとしたら・・・。選挙のことだろうね!」

まんまとクイズ刑事の罠にハマってしまいます。

クイズ刑事
「人にものを頼みに来るのに手ぶらで来ますかね?」

う~ん、と考えた山中さん。
「焼酎? ってことですか?」

うまくシナリオ通りに運んでいることに気を良くしたクイズ刑事は紙を取り出して、二つに折り、それを山中さんの目の前に出します。
「例えば・・・。こんなものを持って来たりしないか?」

山中さん
「封筒ですか?」

クイズ刑事
「これには、何が入っていると思う?」

山中さん
「お金? ですか?」

最後のダメ押しはこれです。

クイズ刑事
「辻元さんが来て、中山さんを頼むと言って、焼酎と現金を置いていった。間違いないな!」

クイズ刑事の剣幕に恐れを抱いた山中さんは、
「そんなことは言ってね~!」と否定。
「だって、刑事さんが仮の話だって言ったから・・・」

クイズ刑事
「黙れ! 誰が仮の話だって言った!」

「もしも・・・」という仮定の話を積み上げて、あたかも辻元さんが焼酎や現金の賄賂を渡したかのような話をでっち上げたのです。

信じられないことに、たとえ話を自白として調書にしてしまったのです。

あり得んす!

そして、池田警部補はそのでっち上げの自白の話を辻元さんに突きつけたのです。
「まあ、こんな事件は罰金で済むんだし、お前のせいで何人もの人が捕まって仕事もできず困っとるんだ」
机をドンドン叩き「分かってんか~!」と怒鳴ります。

池田警部補に恫喝された辻元さんの精神は限界を超えてしましました。
「私が配りました」とやってもいないことを自白してしまったのです。

他にも刑事の取調べを受けた住民がいました。
懐俊裕さんは、刑事の強引な嘘を押し付ける取り調べに精神崩壊を起こしてしまい、自殺しました。
幸い通りがかった釣り人に助けられ命は助かりました。
(つまり、結果的には自殺未遂)

いまも地元で暮らす懐俊裕さんは、警察に対してこう述べています。
「警察や検察に対して腹が立ってます。憎んでも憎み切れない悔しさがありますよ。今でも・・・」
懐俊裕さんは警察に逮捕されたときから仕事に行けなくなったといいます。
それによって生活が苦しくなりました。

結局、嘘の自白以外はなんの証拠も出てこなかったので起訴することは出来ませんでした。
ビール買収、焼酎買収とでっち上げのストーリーが失敗したにも関わらず、県警本部は諦めていなかったのです。

〈会合買収の嘘〉

鹿児島県警の暴走は止まりません。
もう一度川畑さんを賄賂の犯人として逮捕したのです。

その嘘の筋書きは、
選挙に立候補した中山夫妻が辻元さんの自宅で会合を開き、村人に200万円の現金を賄賂としてばらまいたというものです。
その会合の司会役をしたのが川畑さんだとしたのです。

言っておきますが、そんな会合は存在しません。

度重なる警察の暴挙に対して川畑さんの奥さんは警察に電話で抗議します。
そのときの会話が録音されています。
テレビ初公開された警察との会話は驚きです。

川畑順子さん
「うちの主人がどんなんか、もうずっと知ってらっしゃると思うんですよ、警察の人たちも」

地元警察
「川畑さんのことは、私もよう知っとるんですよ。大事にせないかんと言うとるんですけども、本当に申し訳なく思っとるんですよ」
地元警察は謝罪したのです!

このときの会話では、地元警察は何度も何度も「申しわけない」と謝っています。
「申し訳ない」と言った回数は、なんと30回以上でした。

そうです。
地元警察は川畑さんが無実であることも、山中さんが選挙違反をしていないことも知っていたのです。
ですが、今回の捜査は県警本部が行っていたため、上層部に逆らえなかった、ということです。
行き過ぎた取り調べは県警本部の命令だったのです。

県警本部の暴挙はまだ止まりません。
なんと事情聴取を拒否した住民を不当逮捕したのです。

このときの警察の取った行動はあるまじき行為でした。
それは任意ではなく、強制的に連行しようとしたのです。
それも偽物の逮捕状を使ってです。

警察の嘘に永山さんという女性は怒ります。
「でたらめ、でたらめ」
県警は手錠をかけて永山さんたちを強制的に逮捕してしまったのです。

これだけのことをやったにも関わらず、川畑さんが自白しなかったので、しかたがなく釈放します。

しかし、中山候補夫妻をはじめとする住民を含め13名が逮捕、起訴されてしまったのです。
なんの証拠もないままです。

検察も警察の捜査を鵜呑みにして起訴したのです。

この偽の会合買収は計4回行われたことになっていて、そのうちなぜか2回だけしか会合を行った日付が特定されていません。
2月8日(1回目)と3月24日(4回目)とされた日付が大逆転への鍵となるのです。

〈大逆転〉

それは川畑さんの奥さん(順子さん)が行っていたある習慣がきっかけでした。
順子さんは、毎日の予定などをメモする習慣があったのです。

警察による嘘の会合があったとされる2月8日のホテルの台帳を調べてみると、順子さんのメモがあり、そこにはこう書かれていたのです。
「シゲちゃん同窓会。また信ちゃんも」

信ちゃんとは、中山信一候補シゲちゃんとは中山候補の妻シゲ子さんのことなのです。

つまり、この順子さんがメモしたホテルの台帳から中山候補夫妻のアリバイがあることが判明したのです。

買収が起きたとされる会合の場所と中山候補夫妻がいたホテルは車で40分以上の距離がありました。
しかも中山候補は同窓会の会長だったため、夫妻は最後まで残っていたのです。
その場にいた人たちが口をそろえて証言したのです。

嘘はいつか暴かれるのです!

〈裁判〉

無実の罪を着せられた人たちの大逆転が裁判にて展開します。

県警本部の山辺警部が出廷します。

野平弁護士
「あなたはこの選挙の捜査の関係で4人の候補のうち、誰かに電話をかけた、ということはありませんか?」

山辺警部
「会いにいっております」

警察は中山候補と対立するライバル候補と会っていたのです。

野平弁護士
「それはいつですか?」

山辺警部
「たしか・・・、4月13日だったと思います」

4月13日は投票日だったのです。

この事件を担当した弁護士の野平康博氏はこう述べています。

「民主的な選挙を行う上で許しがたいこと」
「投票日当日に警察官が特定の候補者の所に選挙買収についての事情を聴きに行くという事をすると、その特定の候補者と警察が繋がっていると疑われる可能性があるので通常はやってはいけない捜査」
「選挙の公正を疑わしめる行為で許されないと思います」

実は、そのライバル候補と山辺警部は旧知の間柄だったのです。
さらに山辺警部と志布志警察署の署長は警察学校の同期。

県警本部の山辺明宏警部(仮名)には前年にも別の贈収賄事件を担当して、建設会社社長を犯人と決めつけ厳しい取り調べを行い、自白強要した経歴があったのです。
つまり、過去にも事件を捏造していた刑事だったのです。

このとき山辺明宏警部は自白強要が問題となり左遷させられていたのです。
そこへ今回古巣の選挙捜査班長に抜擢されたことで“汚名返上”のチャンスを狙ったのです。

《決着のとき》

2007年2月23日
裁判にて、被告人12人全員の無罪判決が出ました。

注:起訴された13名のうち1名は公判中に病死したため公訴を棄却。

川畑さんは事件を振り返ってこう述べています。

「警察の取り調べがきつくて自殺した人もでた。だが、それに対して鹿児島県警は一言も謝ったことはないです」

「組織自体が腐っているような気がします」

後編の【検証&糾弾編】に続きます。

お読みいただき、ありがとうござんした!